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【禍話リライト】『三日前の予言』

『虫の知らせ』という慣用句がある。
なにか良くないことが起こるんじゃないか、という予感を、人の体の中にいる三尸(さんし)や三虫(さんちゅう)と言われる存在が知らせるらしい。

この話に幽霊や妖怪の類は出てこないが、偶然という言葉で片付けるには奇妙な出来事が、ツイキャス禍話の語り手・かぁなっき氏の元に届いた。


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Aさんは五十歳を過ぎたサラリーマンだ。

ある日の終業後、所用の買い物をするために会社から駅へと向かう途中にある百貨店に立ち寄った。

夕方から夜の間で多少の混雑はしていたものの、買い物自体は早く済み、さて帰ろうか、とエレベーターを待っていたところでスマートフォンが鳴った。

スーツから取り出し画面を見てみると、しばらく連絡を取っていなかった大学時代の友人Bさんからの電話だ。

ご時世柄公共の場での会話などは控えるべきだ、と頭の中では分かっていたものの、Aさんは懐かしさから応答してしまった。

百貨店内を歩きながら、久しぶり。お互い歳取ったなぁ。五十過ぎるとアチコチガタガタだよ――などと、他愛もない会話をしたあと、Bさんが『元気なうちに同窓会でもしないか』と切り出してきた。

Aさんも「それはいいなぁ。○○とか××なんかは先に逝っちゃったもんなぁ」と、いつにしようかとか、どこでやろうか、と、簡単に口頭で打ち合わせめいた会話をしていると、ふとあることに気が付いた。

Aさんの後ろをずっと、若い女の子――Aさんが言うには大学生か新卒くらいの、普段着にリュックを背負った子――がついて来ていたのだという。

Aさんは百貨店内を歩きながら電話していたのだが、エスカレーターの鏡張りの壁や、店のガラス越しなど、思い返せば電話を始めてすぐくらいからずっと、かれこれ二、三十分だろうか。

気が付き始めるとずっと気になるもので、Bさんとの話にも身が入らなくなってしまう。

気になったAさんはBさんに一言断りを入れ、通話状態のままで、そのついて来ていた女の子に「なにかご用が……?」と尋ねてみた。

正面から見たその女の子は、例えば万引きを見張るような職業であったり、もしくは電話をしていたことを注意するような、怒ったり神経をとがらせているような感じには見えなかったという。

「あの、すみません……」穏やかな声音、少し申し訳なさそうな調子で女の子が口を開く。

「すみません……。貴方が今お話しされている方、三日前に亡くなってますよ」

「えっ?」Aさんは小さく声を漏らしてしまった。
(Bが死んでる? 三日前に? 何を言っているんだこの子は)

戸惑うAさんに、女の子は
「亡くなった方と長い間、電話越しとはいえ長い間お話されると、引っ張られていったり、悪いものを押し付けられたりするので良くないんですよ」
『ご存じですよね』と、なんのてらいもなく、当たり前のことを当たり前と言っています、とでもいう風にAさんに話し続ける。

「すまん、B……。ちょっとしたらかけなおすわ」
Aさんが電話を切ると、女の子の表情が少し明るくなったように感じたという。

それなりの年数を生きてきたAさんも初めての体験や話に混乱している中、女の子は「死人との縁が~~、亡くなった方と電話してるなんて~~」など、うんうん、と女の子自身が納得した、というような話をしていた。

そして、言うだけ言った女の子は立ち去っていった。

変な子に絡まれてしまった……。周りの目も気になったAさんは百貨店から出ると通話履歴からBさんに電話をかけなおした。

――おかけになった電話番号は……。

だが、何回かけなおすも電話はつながらず、Aさんは「まさかな……」と独り言をつぶやいた。
帰宅し、少し時間を置いたAさんが改めて電話をかけるとすんなりつながったという。

その日はBさんと集める面子の予定とすり合わせ、二~三か月後にやろうか。などと同窓会の算段を話し、また改めてまとめようか、それで終わった。

Aさんは幹事として参加者へ連絡を取り、そろそろ同窓会当日、というときに、Bさんが亡くなった。

事件や事故、という亡くなり方ではなかった。朝、Bさんが起きてこないので家族が見に行くと、ベッドの上で亡くなっていたのだという。

同窓会の連絡網がそのまま訃報の連絡網になってしまった。

Aさんは同窓会の参加者たちとBさんの葬式に向かった。
入り口に立つBさんの奥さんや家族にお悔やみを告げ、受付へと案内される。

そこには、Aさんがあの日、百貨店で出会った女の子が受付を担当していた。
服装こそ喪服だが、髪型や腰かける椅子のそばに置かれた彼女のものであろうリュックは特徴があり、間違えるはずがなかった。

Aさんは驚きつつも受付をしながら、受付の女の子に姉妹がいるのか、あの百貨店に行ったことあるか、などと尋ねるも、まったく。Bさんの葬儀で初めて来たらしく、普段生活しているのもかなり離れた場所だという。

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「アレも“虫の知らせ”っていうのかなぁ……」
Aさんは話をそう締めくくった。

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この記事は、ツイキャス「禍話」さんの怖い話をリライトさせていただいたものです。

公式ツイッター
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ツイキャス
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youtubeチャンネル『禍話の手先』
https://www.youtube.com/channel/UC_pKaGzyTG3tUESF-UhyKhQ

から書き起こした二次創作となります。

該当回『シン・禍話 第五十二夜 N号棟紹介からのQ同時視聴!』

ツイキャス版
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/725915168

16:05あたりから。

●タイトルはドントさん( https://twitter.com/dontbetrue )のツイートから拝借しました。いつもありがとうございます。

https://twitter.com/dontbetrue/status/1507749138037112832?s=20&t=GDxIahpIzy4Awc4ZLPXqhQ

●あるまさん( https://twitter.com/aruma1220 )による禍話まとめwiki(いつも大活用させていただいてます!)

https://wikiwiki.jp/magabanasi/

誤字脱字衍字そのほか問題ありましたらご連絡ください。


なんでも結び付けるのはよくないけど、そうしたいときもあるよね。

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