【怪談】ただそれだけの話7
芝生が聞いた、オチもなにもない、怪奇な話です。
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『ゆびさきひとつで』
梅雨になると思い出す、何年か前に当時の職場の後輩から聞いた話。
その後輩はかなり適当というかだらしないというか、たまに『それは人としてどうなんだ?』と思う言動があった。
ある夜のこと。
打ち合わせで外に出ていた後輩が少し体を濡らしながら帰社した。
その日は朝からそこそこの雨降りだった。傘を持って出なかったのかと尋ねると、
「いやぁ、誰かがオレの傘持ってっちゃったみたいで、会社にあった置き傘を持っていきました」
それじゃあなんで濡れて帰ってきたの?
「それが打ち合わせ終わって帰り道でなんですけど」
会社の最寄り駅について傘を差し少し歩くと、頭上に冷たい感覚が当たる。上を見上げると行きのときにはなかったというすこし大き目の穴が、傘の中心付近に開いていた。
(あちゃあ、どこかで引っ掛けちゃったかな)
そうして見ていると、ぶす、と、傘から指が出てきた。
(あぁ~、そんな障子みたいに開けたんだ……)
一瞬置いて驚き傘を手から落とす。
ゆっくりと傘がコンクリートに落ちる。
周囲を見回しても、行きかう人たち以外に、原因のようなものは見当たらない。
「その傘ですか? コンビニの傘立てに置いてきました」
あそこの○○に~~と口にする後輩に、どこから、なにから言ったものか迷ったけど、ビニール傘じゃなくてよかったのでしょうね。
※誤字・脱字・衍字ありましたらコメントやTwitterのDMで教えていただけると助かります。
勝手に誰かのものを使ってはいけないという話、なのかなぁ……?
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