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「書く習慣」1ヶ月チャレンジ5日目 昔はどんなこどもだったのか


(1)母からみた私

子どもだったときのことは、親に聞くのが一番!と、母に尋ねてみた。
 
「あんたはねぇ、保育園のとき、お昼寝が嫌いだったよねえ」と、どこか遠くを見つめるように話し始める母。どこかなつかしそうな雰囲気だ。
 
にわかに幼い頃の記憶が思い出される。
そう、あの時、お昼寝の時間になると、同じ組の友達が急に耳触ってきたりして、ちょっかいだしてきて、それがとにかく嫌だったんだよなあ…。

(2)単身赴任をしていた父を避ける

「あとね、お父さんずっと単身赴任してたでしょ。たまに東京から帰ってくると、あんた全然なつかなくってね。こわがっちゃって、お父さんと2人きりになると、逃げるようにして部屋から出てきたりしてたね」
 
父は、お土産一つ買ってこない人。
母からはそう見なされている。ふだんは、家や子どものことはほったらかし。
だから帰ってくるとき、お土産を選んでいるその瞬間くらいは、家族のこと思い出してほしいじゃない。いつだったか、文明堂のカステラ1個でもいいから買ってきてってお願いしたら「カステラなんでどこでも買えるだろう」の一点張りだったらしい。
 
「そんな人だったからね、わたし、作戦を考えたの。近所のおもちゃ屋さんで、あんたの好きなおもちゃを買ってきてね、それをお父さんが東京から買ってきた、っていうことにしてお父さんから渡させたの」
 
そんなことがあったのか。親になってみたらわかる。それだけでも、母親がいかに苦労したのかが伝わってくる。
 
「そうしたらね、あんた、「あー、これ欲しかったんだ~!」って目をキラキラさせながら喜んでさ。でも急に、「あれー?これ(近所の)おもちゃ屋さんと同じ紙袋だね。東京でも、みんなこの紙袋使うんだね」って言ってね。それが可笑しくて、今でも覚えているよ。笑」

(3)父なりの苦悩?

普段は家にいないくせに、たまに東京から帰ってくると、茶の間でたばこをプカプカ吸いながら、テレビを独占する。ムスっとしていて、偉そうにしている。私に興味を示すわけでも無い。
だから怖がっていた、というよりも、なんでこの人はこんなに威張っているんだろう、というのが私の印象だった。そうしたら当然近づくはずもないよな。
 
その時の父は、昭和の時代を象徴するように、寝ても覚めても仕事ばかりしている人間だったし、家族や、社会全体を見ても、家を省みないで仕事ばかりしている父親が許容されている時代だったのだと思う。
 
父にとって、仕事はそんなに楽しかったのだろうか。それとも苦労の連続だったのだろうか。
若くして部長に抜擢され、最終的には工場長になった父親は、自分でも振り返っているように、「思い切り」仕事をさせてもらえて幸せだったなあ、と話す。
 
その「思い切り」の中には、家庭を省みずに、という意味合いが込められているのだろう。
それくらい母の強い支えがあったんだろうな、と誰が見ても思う。
 
毎晩ほぼ365日飲み歩いて帰ってくる。休日はゴルフ。仕事の付き合いだったのか、ただのストレス発散だったのか。子どもが熱を出していてもおかまいなし。
 
それでも、母はうまかった。
散々苦労したはずだったのに、そんな父を見放すわけでも無く、批判もしない。
私は、母が父の文句を言っているのを1度も聞いたことがない。
そして大事な決め事は、「お父さんに相談して決めよう」と、家族の中での権威制を保ってくれたのだ。

(4)やはり母は強し

私が大学生のころ、父親の友達が飲み屋さんに誘ってくれた。
 
「俺な、昔、お前のお父さんに相談されたことあるんだよ。お父さんずっと単身赴任していただろう。たまに帰ってくると、子どもたちお父さんになつかなかったみたいで。あの時な、お父さんはお父さんなりにさみしかったんだよ」
 
話によると、父は、どうやって子どもと接すれば良いのか、その接し方がわからなかったのだと。
そんなことを父は友人に打ち明けていたらしい。
 
ふだん、仕事で大人数の部下を率いて、死に物狂いで戦っているんだ。
自分の家族への接し方がわからない、なんて笑ってしまう。
 
接し方なんて簡単だ。
たまに帰ってきたんだったら、「大きくなったなあ」って頭をなでて抱きしめてあげればよかった。最近、何が楽しいんだ、って話を聞いてあげればよかった。
うまいカステラあるんだよ、って、文明堂のカステラを買ってきてくれればよかったんじゃないのか。
 
昭和の父親と、令和の父親。
たかだかこの40年の間にずいぶんと役割も変わったものだ。
しかしいつの時代でも強いのは母だ。
 
近所のおもちゃ屋で買ったおもちゃをこっそり父親に渡す姿を、周りの人はずっと見てくれていたんだと思う。
 
子どもの頃のエピソードを聴いてみたら、思いがけずに母の懐の深さを思い知らされた。

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