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大学生の頃の大馬鹿者の自分へ告げるメッセージ―砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠し持っているからだよ
私が人生最初のヒッチハイクをしたとき、ヒザとヒジからは流血をし、そして裸足でした。
いったい何があったのでしょうか。
(1)自転車の旅で、電柱とけんかする
大学1年生の夏休み。私は東京の下宿先から、実家の新潟まで自転車で帰省することにしました。
そして、群馬と新潟の県境にある三国峠を越えたところで、不注意から側道の柱に自転車ごとぶつかり転倒。そのまま地面に投げ出され、あまりの痛みに一瞬息が止まるほどでした。
まず、その時の自分に言いたいことが2つあります。
1つに、山をあまく見るな。
2つに、自転車に乗るときはしっかりとズボンを履こう。そして靴も。
そのとき私はTシャツにバスパン、ビーチサンダルという装いで自転車の旅をしていました。この事故の衝撃によりビーチサンダルの鼻緒は切れました。
全身の痛みに加え、気持ちが弱ってしまったことで、「もう自転車の旅を続けるのは無理」とヒッチハイクに切り替えました。峠ですから、ほとんど車は通りません。
それでも10分ほど経ったとき、1台のマイクロバスが通りかかり、私は必死で手を振りました。
事情を話しバスに乗せてもらい、麓の越後湯沢にある、保健医療センターまで運んでもらったのです。
お医者さんの診察結果は、大丈夫、とのこと。
「骨には異常はないね。衝撃で肺挫傷を起こしているかも知れないけど、他は問題ない。このまま自転車の旅を続けてもいいよ。」
まだ痛みはあるし、傷だらけだけど、とにかく無事で良かった。
私は近くにあった100円ショップで新しいビーチサンダルを手に入れ、残りの旅を続け、見事帰省することができたのでした。(反省して靴を買いなさい。)
それ以来、越後湯沢の町は私にとって特別な存在になりました。そして、ボロボロの私と自転車を乗せて運んでくれたマイクロバスの運転手さんに、感謝の気持ちを改めて伝えたいと思って過ごしてきました。
(2)星の王子さまと越後湯沢の関係
―砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠し持っているからだよ
サン=テグジュペリの「星の王子さま」の一節です。
どこかに井戸があるんだ、って思うから、この砂漠が美しく輝いて見える。
このシーンを読むたびに、私は越後湯沢を思います。
越後湯沢のどこかに運転手さんが住んでいる、って思うからこの町も美しく見えるんだ、と。
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(3)旅を終えて、新たな旅が始まる
じつは、私の自転車の旅には後日談があります。
病院に運ばれたとき、受付の事務のお姉さん(おそらく同級生かちょっと年上くらいでした)と仲良くなりました。なぜかというと、このときの私は保険証を持っていなかったからです。
お姉さん「保険証を忘れた場合は5000円をいちど預かる約束になっているの」
わたし 「えっ。そうなんですか??」
お姉さん「というか、何でそんなコンビニ行くみたいな感覚で旅してるの?怪我しちゃってるし。」
わたし 「面目ない。」
5000円を預け、支払いを終えました。
後日、東京のアパートに一通の封筒が。中には5000円の返金手続きの書類と、それとは別にお姉さんからの手紙が入っていました。
「お元気ですか。あのときはびっくりしました。無事に実家まで帰れたのか、ずっと心配していました。………よかったらお返事ください。」
そして、なんとお姉さんとの奇跡の文通が始まったのです。
これこそ怪我の功名。私とお姉さんとの手紙は、はるか三国峠を越えて続けられていったのでした。
旅館のバスの運転手さんと受付のお姉さん。
砂漠の中に井戸が眠りすぎの町、その名も越後湯沢。素敵すぎる思い出を与えてくれるこの町は、感謝の気持ちとともに今も私の心の中に美しく輝いているのです。