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黄金の人生
次に龍をお披露目できるのは12年後。
ということで1日だけ遅れながら、もう一点、龍の作品実績を。
これは、著書筆者の自費出版物の装画として依頼されたもの。
通常、フル描き下ろしはtoBでないとなかなか対価面の折り合いがつかないんだけど、たまに、エージェントや代理店通さなくても見積もり通り支払ってくれるtoC(個人)がいる。
我々の仕事は、契約=売上という仕事でなく、ほぼ毎回がこの中間に”制作”というプロセスが入るので、成果物の機能への価格以外に、その制作時間をフォローしてもらえる費用がないと成立しない。望まれる仕上がりを成すにはそれに見合った費用が必要だし、直しや調子が追加されればそのための費用もかさむ。
つまりこの案件は「私が絵を描く時間を正当な値付けで買ってもらえた」仕事だった。
この絵には、どうしても北海道・釧路にある「幣舞橋」を描き込んでほしいという要望があった。
当然初耳であり、見たこともない橋だった。
できることなら実際に取材に行くのがベストなんだけど、それはさすがに難しい。だからいろんな資料をかき集め、それをもとに3DCGを作り、仮想空間に橋梁を作った。
そしてそれをもとに、何度かの試作画を重ねてこの一枚に至った。
龍も何度も描いた。
当初は蛇のように長かったのが、最後は「伝承や既成概念に依らない方向で」と、洋龍の混じったような姿に落ち着いた。
空模様も、いくつもの夕日を提案したが、本の表紙になる見栄えを優先して一番シンプルなものになった。
けど、十分な時間を買ってもらえていたので、全力でできたし、無駄に感じたものがなかった。
だから、完成したときは、心も満たされた。誇りも持てた。
時間を買ってもらえることは、自分の生の価値を客観的に証明してもらえることだから。
また、自分の人生が黄金色に光るような、そういう仕事がしたい。
12年後に描く龍が輝いているように。