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次世代型路面電車〜宇都宮LRT〜
宇都宮LRTが開業1年で乗客数が累計600万人と、好評のようです。私も先日、乗ってきました!
宇都宮LRTは、2023年8月に運行を始め、日本国内の路面電車路線としては万葉線(富山県)以来75年ぶりの新規開業となります。
今回は、そもそもLRTとは何なのかということを解説していきます。
まず、LRT(次世代型路面電車システム)とは、「Light Rail Transit(ライト・レール・トランジット)」の略称で、各種交通との連携や低床式車両(LRV)の活用、軌道・停留場の改良による乗降の容易性などの面で優れた特徴がある次世代の交通システムのことです。
どのようにLRTが普及していったのか、世界と日本における都市交通の歴史を振り返りつつ、都市におけるLRTの役割や、導入の効果を見ていきます。
日本の都市交通
1895年に京都で日本初の路面電車が開業して以降、路面電車は多くの都市で主要な交通手段となっていました。
しかし、1960年代からマイカーの増加に伴う渋滞で、定時運行が難しくなり輸送人員が減少します。1970年代末には各地で路面電車の廃止が相次ぎ、人口100万人を超えるような大都市では、輸送能力の高い地下鉄の導入が進められました。
一方、地下鉄では輸送力が過剰となる都市では、公共交通を主にバスが担いますが、輸送能力と定時性に課題があります。
北米の都市交通
1955年までに路面電車の88%が廃止されたアメリカでは、州間高速道路の建設などにより郊外に低密度な都市が広がりました。しかし、大気汚染や交通事故の増加といった社会問題に直面することで、軌道系交通機関の必要性が再認識されます。
その後、より安く、ドイツで実績もあった路面電車に着目し、新しい概念「LRT」が生まれます。1978年にカナダのエドモントンで世界初とされるLRTが開業されると、その後は北米の各都市でLRTが建設され中心市街地の活性化を達成しました。
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欧州の都市交通
ヨーロッパでも1950年代には市街地の交通渋滞が深刻化し、イギリスやフランスでは路面電車が続々と廃止されました。
その後、北米でのLRTの成功を受け、ドイツやオランダでは既存の路面電車をLRTへと改良する都市が現れます。フランスでは、1984年にリールでミニ地下鉄のVALが開業した一方で、翌年にはナントで廃止した路面電車をLRTとして復活させるなど、VALとLRTが拮抗する状態が続きました。
しかし、1994年にストラスブールで新規開業したLRTが、その斬新なデザインと街へもたらした効果で世界中に衝撃を与え、ヨーロッパ中でLRTブームが起きました。
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宇都宮LRT
LRTは、宇都宮市などが構想から30年をかけて導入するもので、JR宇都宮駅の東口と隣接する芳賀町の工業団地の、14.6キロの区間を結びます。すべての線路を新しく建設したLRTは全国で初めてです。
LRTの整備にあたり、宇都宮市は「ネットワーク型コンパクトシティー」という構想の実現を目指しています。市の狙いが当たり、宇都宮LRTは開業初年度から黒字となりました。
今後、LRTをさらに西側に延伸する計画で2026年に工事を始め、2030年代前半に開業を目指します。
欧米に遅れはとったものの、日本でもようやくLRT が実現されました。宇都宮市の成功を受け、LRTが全国に普及していくと、地方都市のコンパクトシティー化が広がっていきそうです。