ソフトシティ
「ソフトシティ」という言葉はご存知でしょうか?
これはスウェーデンの都市デザイナーのディビッド・シム氏が提唱する考え方です。
ディビッドは高密度のなかで人間的スケールを維持し、人びとが快適に交流し暮らせるソフトな街づくりを先導しています。
そんな彼が著作した「ソフトシティ 人間の街をつくる」を紹介します。
私もかなり影響を受けた本なのでおすすめです。
ソフトシティという言葉
ソフトシティという言葉が生まれたのはディビッド氏が東京に滞在していたときのようです。
東京という街は世界最大規模の都市で、多くの外国人は新宿のような高層ビル群を思い浮かべます。しかし、著者が訪れた東京のイメージは大都市とはまったく違い、穏やかな都市だと感じました。
特に印象的なのはお花見です。多様な人々が屋外に出てきて、ピクニックを楽しみます。お花見には、人びとが快適に交流し過ごしていけるソフトな仕組みが詰まっています。
20世紀の都市の変革
1933年のCIAM(近代建築国際会議)で都市計画及び建築に関する理念「アテネ憲章」が採択されました。都市から住む、働く、レクリェーション、交通の4機能を取り出し、これらを操作することによって都市を作り上げようという方法です。
この機能主義的な取り組みは、過激な進路変更でもありました。次第に人々の不満が溜まっていった結果、1998年の新アテネ憲章では、基本的に都市の4機能は分けるべきではないという結論になりました。
ソフトシティへの取り組み
急激な都市化により、今まであった都市でのアクティビティがなくなりつつあります。ソフトシティを実現していくためには、天候と共生すること、街に出ること、人と交わることなど、人間味のある暮らしができるまちづくりが必要です。
身近な居場所
社会課題でもある孤独・孤立は、機能主義が進んだ影響が大きいです。まちづくりにおいて、カフェやバー等身近な居場所があると居心地の良い生活に繋がっていきます。
複数の用途
アテネ憲章による都市計画により、近代の都市計画は機能が分離されています。しかし、都市のアクティビティを活性化させていくためには、様々な機能がミックスされていることが重要です。
多様な移動手段
ソフトシティの構築には、歩行、自転車、公共交通機関等、自動車に寄らない移動手段の確保が大切です。北米やヨーロッパでは、ライトレールが普及しており、輸送の効率化が図られています。日本においても、富山と宇都宮にライトレールが運行されています。
人中心の街路設計
20世紀では車中心の都市計画がなされてきました。しかし、近年は街路をただの従来から人々がそこで過ごせる空間になるよう再設計されています。例としては、日の当たる場所の歩道を広げてその場で滞留できるような試みがなされています。
屋外での暮らし
北欧では、気候が厳しいにも関わらず、多くの人が屋外で過ごしています。テラスでお茶を楽しんだり、屋外のサウナを楽しんだりと、天候と共生した暮らしを実現しています。日本では、屋外に出る暮らしはあまり無さそうにも思いますが、お花見シーズンになると途端に人々が外に出てきます。
ソフトの強靭性
すべての都市はハードとソフトの集合体です。機能主義的なハードはその時々の変化に弱いですが、感受性や応答性があるソフトは、変化に強いです。今後の都市計画を考えるにあたり、著者の師匠であるヤン・ゲールが言った「まず、アクティビティ(生活)、次に空間、最後に建築」というのはキーワードになりそうです。