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縁側のような老人デイサービス〜52間の縁側〜

これまでの高齢者施設は、最期までその人らしく生きていくことができているのか?
この事に疑問を感じた介護事業者の石井さんは、人生の終わりに向うときにどんなものがあったらよいかを検討していきます。
今回は、地域の人たちが気軽に立ち寄ることができる縁側のような施設「52間の縁側」を紹介します。

「52間の縁側」は千葉県八千代市に位置する老人デイサービスです。敷地は元々竹藪でその開墾から始め、長い縁側を持つ建物が誕生しました。
運営するのは有限会社オールフォアワン代表の石井さんです。ケアする側の事情が優先される介護のあり方に疑問を感じ独立し、いくつかの高齢者施設を開業しています。
52間の縁側では、制度やお金にだけ頼るのではなく、地域で助け合う共生型デイサービスを目指しました。

デイサービスだけではなく、若年性認知症などある人々の就労支援の場、近所の大人が集える場、子どもたちの放課後の居場所など、いろいろな形で利用できる場所となっています。
そのため、基本的に敷地や建物は近所の人や子どもに開放されています。

長大な建物ですが、奥行きは約4.5m程しかありません。崖条例適用地のため建築可能範囲が限られ、南北に細長い敷地に沿った形となりました。
北端からテラス→カフェ・工房→デイサービス→座敷・浴室→南端にテラスという建物構成になっています。
間取りの曖昧さが昔ながらの日本家屋を彷彿させます。

細長い建物

敷地の北側には遊び場となる池があります。この池は近所の子どもたちとつくった創作の池です。
池の上には北端のテラスがあります。ここでデイサービスの利用者が静かに過ごしたり、子どもたちが宿題をしています。

創作の池

カフェには近くにある団地の人たちがくつろいでいたり、ワークショップを開いたりと地域のいろんな人が集まる場になっています。
工房には軽食をつくるキッチンや、就労支援で何かを作る工房として利用できるようなスペースになっています。

カフェ

デイサービスは大開口に面した空間になっています。引戸を開放させれば庭に面した縁側となり、庭では子どもたちが遊ぶ姿を見守れます。
奥にあるキッチンと学習机のスペースでは、学校になかなかなじめない子たちなどが過ごしています。

デイサービススペース

離れのような座敷はこじんまりとしたスペースです。座敷の奥にある浴室は、普段はデイサービス利用者のものですが、夏場はプール、冬場は足湯としてなど地域に開放しています。

浴室

この施設では様々な事情で居場所のない子供たちが、一緒に食事をしたりお風呂に入ったりしています。その代わりに庭の水やりや、お風呂の掃除、食事の準備を手伝いをしています。
利用者の家族たちも施設の手伝いをしたり、他の利用者のお世話をしたりしています。
こういった形で皆がお互い様の精神で、安心感のある居場所をつくっていっています。

ここでの生活は制度だけではつくれない日常ではないでしょうか。
従来の高齢者施設では、どうしても事業者がいかに効率的にサービス提供できるかに焦点がいきがちでした。
この施設では、いろんな人が助け合う昔は当たり前であった風景が日常的に広がっています。
最期まで自分らしく生きていくためにはどういった居場所がいいのでしょうか?
改めて考えるきっかけになりそうです。

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