テレビのビジネスモデルが招いたジャニーズ忖度
TBSの報道特集が、テレビ局がジャニーズ事務所にどのように忖度していたか、現場の声を伝えていた。衝撃的!と言われているが、そんな驚くべき話ではない。
あれでびっくりしている報道部の人たちが、いかにエンタメを知らないかということだ。この問題の本質は、もっと深いところにある。テレビというビジネスモデル自体の中にあるのだ。
でも、報道部は本当に知らないのか。それも疑問だ。テレビはスポンサーに依存し、いつも視聴率のことを考えていなくてはならない。ニュース番組も視聴率合戦をしているから、それを知らないはずない。
ましてやエンタメ担当は、確実に数字が取れる芸能事務所が何より大切だ。我ら外部の人間から見れば視聴率なんかどうでもいい。いいものを作ってもらえばいいだけである。しか〜し、テレビマンにとっては視聴率こそ命なのだ。
0.1%でも下がったら大ごとで、責任問題である。逆に、0.1%でも上げるためには、人間としての良心も魂も売る。他局に0.01%でも劣ったら大変なのだから。
ここまで視聴率を気にするのは、スポンサーからの広告収入が全てだからだ。このビジネスモデルを変えない限り、第二のジャニーズ事務所が出てくるだけ。私は以前から、月額500円の有料制を主張している。スポンサーへの依存度を下げて視聴率から解放されない限り、テレビの世界は変わらない。
しかし近年は、資金が潤沢であるはずのNHKまで、視聴率ばかり気にしている。NHKスペシャルまでバラエティー化している。予算を政府に握られているからか、受信料を取っているから世論の支持をアピールしたいのか。
世論が「テレビになんかに、びた一文たりとも払いたくない」という反応なら、それこそ解体的出直しが必要だろう。実際、ジャニーズに過度に忖度するようになったのは90年代に入ってから。ネットが台頭して、テレビの視聴率が下降気味になってからである。
ジャニーズを出せば確実に数字が取れるので、出さなくて視聴率が0.1%でも下がれば、「ジャニーズを出さなかったからではないか」という雰囲気になるわけだ。実際はどうなのか検証されないままで。
また、下請け制作会社に丸投げするという構造も、この事態に拍車をかけている。視聴率が少しでも下がれば、すぐに契約解除されてしまう状況では、制作会社は確実に数字が取れる芸能事務所に依存しがちだ。
一方、先日の記者会見を批判し続けている、主にX(旧ツィッター)などのネットを活動の場にしているジャーナリストたちにも事情があると思う。彼らは志が高く、正義感の強い人たちである。
ただ、こういう言い方をしては何だが、彼らにとっては今が勝負の時だ。ほぼ無名だったのが全国的な知名度を得て、SNSのフォロワー数も激増した。こんなことは滅多にあるものではない。
NGリスト入りジャーナリストがグループを作って、一緒に活動しそうな感じになっている。今後も記者会見のみならず、ジャニーズ事務所改めスマイルアップが補償を終えるまで、ずっと批判を続けるだろう。
私は別に、これを悪いことだとは思わない。今のメディア構造の中で、テレビに出られない個人のフリージャーナリストが生きる道はそんなにないからだ。これもアリだと思う。
以前、ミャンマーで女性フォトジャーナリストが死亡した時、一緒に行動していた男性ジャーナリストが、見方によっては彼女の死を利用するかのような形で、しばらくテレビに出ていた。
あの時は、さすがにどうかと思った。でも、以後全く露出がなくなったことを思うと、あれは千載一遇の機会だったのだと思う。どんなに志が高く頑張っていても、誰にも見てもらえなければ意味がないし、そもそも生活できない。
私は、「アジアプレス」のウェブサイトを毎日開いて読んでいる。フリーランスが集まって作っているジャーナリスト集団で、主にアジアの政治社会情報を発信している。
以前は会員システムを取っていて、私も会費を払っていた。だがうまくいかなかったようで、それはなくなった。やはり難しかったのだろう。少しでもアクセス数を増やして支援しようと、朝晩開いている。皆さんもよろしかったら是非。
いわゆる市民メディアも収益を上げられず、商業メディアに全く太刀打ちできずに消えてしまった。そういう意味では、記者会見を批判し続けているジャーナリストたちに、頑張ってもらいたいと思う。
ただ、被害者の救済という目的を忘れないでもらいたいだけだ。「記者会見は犯罪の後始末をするために開くもの」と書いていたので、「いえ、後始末は新会社が補償で行うものです」とコメントしておいた。
スポーツ紙の記者が、二度目の記者会見が失敗に終わった理由を、こう書いていた。「ジャニーズ事務所は今まで記者会見を全く開いてこなかった。そのため、こういう際に開く記者会見のノウハウを持っていない」と。
この指摘が一番的を得ていると思う。ものすごく邪悪な意図を持って、ああいう形にしたとは思えない。そもそもあの記者会見は、新社名と今後の方針を発表するためのものだった。
だから、そこにばかり批判が集中していることには違和感がある。記者会見のやり直しを求めること自体が正義の証明になっていて、このままでは利権化するのではないかとさえ思う。
追記
何がなんでも、東山と井ノ原を辞めさせようという流れになっているが。それでは誰が補償業務にあたり、行き場のないジュニアたちのマネージメントをするのかと思っていたら。なんと、竹中平蔵が関心を持っているという情報が!
「プロ経営者を送り込めば再生できる」と言っているそうだ。最悪! 私はそういう方向を恐れているのである。社長が替わるならエンタメ界から出てほしい。それが難しいので、井ノ原でも仕方ないかなと。