キンプリ平野紫耀の言動が韓国で怒りを買う/この騒動の本質は
キング&プリンス、略してキンプリの平野紫耀が、冠番組「King&Prinseる。」の韓国ロケで問題発言を連発した。韓国では大きなニュースになって批判されているらしい。しかし日本ではネットで騒がれているだけである。
ジャニーズ事務所だということもあるし、アイドルのバラエティーが炎上したではニュースにならない・・・というより、大マスコミは、そんな下世話な話題は取り上げないということである。確かに扱いにくいとは思う。
平野は韓国ロケで、知っている韓国語を聞かれて「謝謝」「韓国の首都はパク」などと答え、周囲を見回して「けっこう高い建物がある」とも言った。彼がいかにおばかキャラだとはしても、これは演出だ。
日本のネットでも「実に傲慢」「初めて訪れた国で取る態度ではない」という批判が出ている。平野とて「謝謝」が中国語であること、首都がソウルであることぐらい知っている。基本的には演出の問題だ。
端的に言えば、「中国と韓国の区別がつかない」というネタが面白いと思っている、演出陣の恐るべき低級さが問題なのだ。しかし、日本のバラエティーはそういう水準であり、日々その程度の番組が垂れ流されている。
加えて、アイドルの冠番組などこの程度でいいだろうという意識が感じられるのだ。そもそも、この番組はスタート時から酷かった。キンプリ初の冠番組を始めるにあたって、一昨年の元旦深夜に先行番組が放映されたのだが、それを観て私はショックを受けた。
番組の最後に、キンプリは渾身のパフォーマンスを披露した。懸命な歌とダンスを通じて、張り切っている気持ちが伝わってきた。だがその直後、番組は彼らの頭上にボールの雨を降らせたのである。
思いもしない展開で本当に驚いている彼らを見て、司会の劇団ひとりは笑っていた。新番組開始に向けて若者が真剣に歌い踊ったのに、まるでそれを嘲笑うような演出だ。面白くもなんともない、誰が喜ぶのかわからない演出だったのである。
たまたま観ていた私は気分が悪くなった。こんなことでは日本のエンタメはダメになる。私は腹が立って、BPO放送倫理・番組向上機構に訴えた。その時のことはここに書いてある。
だが私のこの怒りに対して、周囲の人々はほとんど反応してくれなかった。アイドルのバラエティーなど、大した問題だと思わなかったのかもしれない。中には暇人扱いする人もいた。
ジャニー喜多川の性加害が見過ごされてきたのも、ジャニーズ事務所への忖度だけではなく、アイドルのことなんてという意識が社会にあるのではないだろうか。だがアイドルが好きな人はたくさんいる。アイドルは決して過小評価されるべき存在ではない。
今回の騒動には、テレビ界の醜悪な構造が反映されている。実際に番組を製作しているのは下請けの製作会社だ。製作会社のベテラン社員が、正規職の新入社員に仕事を教える。しかし収入は半分以下だ。
そんな状況で質のいい番組を作れるはずがない。加えて、大して芸があるわけじゃないアイドルの1時間番組を、週に一本作るのである。ネタも尽きるというものだ。皮肉なことに、最近の「キンぷる」は韓国に依存している。来週は高橋海人の韓国ロケだ。
アイドルが1時間の冠バラエティーを持つこと自体が、無理なのではないだろか。結局、芸人に依存するかクイズかゲームになる。そもそも、どうして歌や踊りを見せないのか。音楽番組や事務所との兼ね合いで、何か不都合でもあるのか。
こうして考えてみると、問題はアイドルのあり方や扱いにまで行き着く。平野紫耀のような傑出したアイドルに、あんなことを言わせて隣国で顰蹙を買うなんて、演出サイドは深く反省すべきだ。
また事務所は、アイドルを過剰にバラエティーに出すことを止めるべきだろう。知名度を上げるためだろうが、ああいうバラエティーを喜んで見る人がアイドルを大切に思うだろうか。
ちょっと名の売れた芸人がアイドルをいじる場面など、見たくない。日本にはお笑い芸人が多すぎる。吉本が学校を作ったせいだ。彼らも月に五千円で生活したことを笑い話にしているが、全く異常な世界だ。それを社会が受け入れているのもおかしい。
特定の層を軽んじたり、雑に扱ような社会ではいけない。例えばトラック運転手や宅急便、ウーバーイーツの配達員などだ。彼らは物流を担う中核人材なのに、社会的な敬意を得られていない。
利用していて敬意を払わないのは間違っている。アイドルや芸人、下請け製作会社も同じだ。テレビは彼らに依存しているのに、どこかで馬鹿にしている。そんなメディアに未来はない。