WBCワールドベースクラシックという歪んだビジネスモデル
WBCワールドベースクラシックで、日本社会は大いに盛り上がった。試合中継の視聴率は、FAFAワールドカップの日本戦を超えたのである。もはや時代の中心ではなくなったテレビ業界も、瞬間暴風雨的な活況に沸いた。
しかしWBSは、その出発点からして歪んでいたのである。MLBは2000年代初頭から、市場の拡大を目指してグローバルビジネス化に舵を切った。そして2005年に、世界大会の開催を発表したのだ。
しかしNPB日本野球機構と選手会は当初、参加に消極的だった。開催時期の一方的な決定や利益配分が、あまりにも MLB中心だったからである。当時の選手会長は古田敦也で、知的かつ明瞭に反対理由を述べていた。
それに対し、MLBは繰り返し参加を要請した。そして、日本の不参加によって大会が失敗した場合は経済的補償を要求するとし、不参加は日本の国際的孤立を招くとまで警告した。驚きべき横柄さである。どうしても、日本を市場として取り込みたかったのだ。
この度重なる恫喝にNPBは屈した。選手会はなおも反対したが、試合を見たいだけのファンたちが支持しなかったこともあって、同意せざるを得なかったのだ。あの時の悔しさを私は忘れない。
政治や経済のみならず、スポーツまでアメリカに逆らえないのだ。以後、日本選手の「メジャーリーグ」挑戦は加速した。MLBの目論見は見事に当たり、日本市場は見事に取り込まれ、MLBの市場拡大と延命に貢献している。
古田のような、未来を見据えて日本野球を担っていこうとする選手はもういない。