「ご機嫌を損ねないように」って言ってる人がこちらを対等には見てない件

数年前のこと。
ある組織の男性向け「育休取得＆育児参加を支援する研修」に登壇した。
まだ今ほど男性育休を押してる組織が多くなかった時期なのにその組織はいろいろ前向きだし、希望者だけの研修で５０人ほどが参加していて素晴らしいなと思った。そこに居た人はすでにお子さんがいる人も、これから生まれる人もいたけれど、ともかく「イマドキはちゃんと（父親も）子育てに関わらないといけない」という認識だったし、具体的にいろいろ関わっている経験者もいたので「うーん、別にここで私が伝えることないんじゃない？」と序盤には思ったくらいだった。

ところが後半になって、より具体的に「不安」「疑問」を語り合い、お互いに「どうすればいいか」「どんなやり方をしているか」などを伝え合っていた現場で、こんな話が聞こえてきて私は「ああん？」って目が三角になりかけた（なってたかもしれない笑）。

既に子育て中の男性たちが、まだ第一子が妊娠中という男性に向かってこういったのだ。
「とにかくオクサンのご機嫌を損ねないことだよね、大事なのは」と。
それに対し、
「やっぱそれですよね～。どうやってご機嫌とってます？笑」という会話につながっていった。

ちょっと待て。なんだそれは。何を言ってるんだ。

別の日の別の場所での話。
男性講師がやっている職場で起きている人間関係トラブル解決のための講座の中で、男性上司が語る女性部下との関わりの問題点（ハラスメントにならないかどうかなど）についてこう話した。
「解決策はもちろん教えるが、中でも女性の機嫌を損ねないために気を使うことは大事だよね」と。

機嫌を損ねないように、
機嫌を取って、
それって、問題の本質とは関係ないのでは？
むしろ、ごまかしじゃないのか？相手をバカにしていないか？ご機嫌さえとっておけばどうにでもなる、ごまかせる、と思っていないか？

交渉術としてもちろんその方法がまったくない、わけではない。
ご機嫌取りに来てるな、とわかっても、その努力に免じて「まあ許してやるよ」とか、「今回はあなたから買うよ（笑）」と言ってくれる場面はある。それはその人間関係の目的が「イマココをなんとかする」一点だったり、逆に日頃から良い関係を築いているゆえに「今回はこれで勘弁」と言えるから、だろう。

一方で、上にあげた例は違う。
互いの関係性の中にある「ちゃんとすり合わせておかなくちゃいけないこと」「お互いに相手を大切にする認識を持つ必要があること」を、表面的なやり方でごまかそうとしているのだから。

これってつまり、相手を人としてちゃんと対等に見ていないことって言えると思っている。
で、やってる方は気が付いてないけど、やられている方はよくわかっている。「あ、ごまかしてんな」とか「あ、バカにしてんな」とかニュアンスは伝わる。その結果、相手側も「じゃあ、この人のことは信用できないな。こちらはこちらで都合よく利用させてもらおう」と考えるのだ。
なのになぜか調子よくご機嫌とれることが、人間関係を上手くやれること、みたいに誤解している人は（男女問わず）いる。
でも、相手のご機嫌さえとっておけばオッケー、なんてことがバレないとなぜ思うのだろう。
少なくとも、家族とか大事なチームでこれはやっちゃいけない。
表面だけキレイにならされてるけど、中身スカスカ、足元ぐらぐらな砂上の楼閣でしかないから。

何度でも言う。
人はなぜか（小さい人でも高齢者でも）「なんかバカにされてる気がする」「対等に扱われてない気がする」ってことにはすごく敏感だ。それやってると、あなたも同じように扱われて、誰かとちゃんと関係性を築くってことから遠くなっちゃうよ。

もちろん、大いに反省と自戒を込めまくって書いてる。痛い思いをして反省してきたことや、信用無くしたことだって多分ある。でも、それ以上に「ハイハイ…」ってごまかされたことは山ほどあるから、今でもこのニュアンス見つけると、低い温度で沸騰しちゃうのは反省している笑

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