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私は、教師だった。 生徒に物を言い、導き、教える立場だった。 今とは違う生きかたをし…
私の診察が始まる。案の定話の切り出しは医師からで、 「他の患者さんとちょっと仲よくしす…
中に入ると、看護師がいつかのように私を廊下の隅に追いやる。 「前も言ったけど、他の患者…
犬塚さんとまた会ったのは、秋になってすぐだった。診察時間を昼手前に戻し、案の定何時間も…
日々は続く。二週間に一度の診察は繰り返され、本格的な夏がくる。私は予約時間を夕方にずら…
スーパーマーケットの、値下げコーナーでスイートスポットまみれのバナナを買った。ほとんど…
午後一時過ぎ、PCを開く。スマートフォンに入れてあるSNSをこちらでも覗く。たまに何かを言われたり、訊かれたりするが、絶対に返信はしない。一喜一憂したくないからだ。いいねもお気に入りもブックマークもフォローも短いコメントも怖くて仕方ない。フォローされてもフォローを返すことはない。それでも非公開にしないのは、ほんのわずかに残った自己顕示欲だろう。 【着替え。朝食。洗濯。掃除。買い物。昼食。おしまい。】 午前中にやり終えたことを並べただけの、短い投稿にも、誰かが読んだ形跡は残
リュックサックを定位置に片づけ、時計を見るともう十二時を過ぎていた。昼食は何にしよう、…
恋人がいきなり、教師を辞めます、と言ったのは六月の半ばの話だった。校長は無責任だと怒り…
壊れる、という言葉の、本当の意味を知った瞬間があった。 指先の一つも動かせなくて、呼…