#51 親の仕事
東洋経済ONLINE
母は偏差値35なのに東大志望の僕にこう言った
西岡 壱誠さんの記事です。
突然ですが、みなさんが親御さんだったとして、偏差値35の子どもがいきなり「東大を目指す」と言ってきたらどうしますか?
僕は高校生のとき、母親に同じことを言いました。「偏差値35で、成績悪くて英語とかこの前のテストで100点満点中3点だったけど、東大に行きたいです」と。
そのときの回答は、意外なものでした。
「で、あんたは私に何をしてほしいの?」でした。
「別に勝手に目指せばいいと思うけど、私は何か具体的にやったほうがいいことはあるの?」
絶対に反対されると思っていた僕は拍子抜けしたのですが、ちょっと考えて、「じゃあ夜食を作って。夜勉強するから」とお願いしました。そうすると「いいよ」と言って、その日から毎日うどんとかおにぎりとかの夜食を作ってくれたのでした。
なぜ、母は反対しなかったのか?僕はあとから聞いてみました。「なんであのとき、反対しなかったの?」と。
すると母はこう言いました。
「だってあんた、高校生だったじゃない。義務教育の期間は終わって、選んで高校生になった、大人だったじゃない。なら、相談には乗るけど、自分で決めたことなら口を挟む権利はないから」
誤解のないように言いますが、母は放任主義的な人ではありませんでした。小学生のときはかなり勉強にもガミガミ言うタイプで、僕が勉強しないので何度も怒られました。
でも、高校に上がってから、ピタッと勉強についても生活についても怒られることはなくなりました。「高校から先は、子どもが自分で決めなきゃならない時期だから」と考えていたのだそうです。
そんな母は受験の前、神社に5000円を持ってお祈りに行きました。
それを見て僕が「合格祈願をしてくれたの?」と聞いたら、首を横に振りました。
「息子が、試験会場に、体調の不備なく、道中で事故に遭うことなくたどり着いて、無事に試験を受けられますように」ということを祈ったのだそうです。
「合格するか不合格になるかは、あんたの問題だから、私の管轄外。逆に、あんたが健康に試験会場にたどり着けるかどうかまでは、私の母親としての仕事」とのこと。
今思うと、受験のときの僕は合格できるかどうかがすごく心配で、気が気ではありませんでした。そんなときに、自分だけでなく母までが合格するかしないかを心配してしまっていたら、きっとプレッシャーになっていたと思います。
母はずっと、結果ではなく過程を重視していたのです。子どもが合格できるかどうかではなく、子どもが悔いなく頑張り切れるように支援していたのです。
これは放任ではない。子どもの問題と親の問題をしっかりと分けて考えている。
よく面談である事例だが、「うちの子のやりたいようにやらせますので」という親が実に多い。それ自体は否定しないが、自主性に任せることと、放任を一緒にしてはいけない。
子どもの仕事、親の仕事、担任の仕事。これらを明確にすることで、より良い進路選択ができると考えている。
私が担任した生徒の話です。
生徒「先生、〇〇大学を受験したいです」
私「OK!挑戦は素晴らしいこと」
生徒「OKですか?信じられない」「絶対にやめとけ、と言われると思ってました。」
私「何で?」
生徒「受からないから、、」
私「それならやめた方がいいよ」
生徒「やります!やります!ありがとうございます!」
私「私にできることある?」
生徒「背中を押していただいたので、十分です!たまに元気ください!」
私「OK」
この生徒の偏差値では明らかに厳しい。だからやめろと言われると思ったのでしょう。
なぜ、ひとりの大人の意向で、子どもの将来を奪えるのか、私は謎で仕方ありません。
親御さんも温かく見守り、見事に大逆転合格を勝ち取りました!!
課題の分離をすること。
我々、大人や親は子どもに頑張り切れるように支援することが大切です。