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神様の気まぐれ

神様の気まぐれでこの小さな世界は終わることになりました。
互いに依存しあう彼らの最期を神様は楽しみにしていました。

さて世界が終わる一週間前。


「ねぇ、世界終わるらしいよ。」
「あぁなんか朝のニュースで見たわ。」
「どうする?何する?」
「俺、お前と二人っきりで死ぬって決めてたんだけど。この調子だと無理っぽいな。」
「えー諦めちゃうの?やろうよそれ。」
「なに?おれと死んでくれんの?」
「ふはっ。喜んで!」

「世界終わるんやって。やばない?」
「やばない?って軽すぎやろ。」
「あと一週間かぁ。なあ、世界征服せえへん?」
「は?あほちゃう?」
「なんかできそうな気がすんねん。お前となら。」
「しゃあなし、付き合ったってもええけど。」
「それじゃあ決まりやな!」

「死にたい。」
「どうせ一週間待てば死ねるじゃん。」
「つまんない。」
「黙って生きてろ。」
「私が死んだら泣く?」
「お前は死ねないよ。」
「わかんないじゃん。」
「死ぬ前に漫画返せよ。」
「あ!忘れてた!」

「なんか騒がしいね。」
「関係ない。」
「世界終わるから僕たちの遊びがあんまり目立たないね。」
「別にいいよ。」
「僕死にたくないなぁ。」
「殺すのは好きなくせに。」
「それとこれとは別じゃん。」

世界が終わるころ、死にたがりも生きたがりも病人も人殺しもみんな誰かと手をつないでいました。
それは生きていたり死んでいたり様々でした。
心中は成功したのか、世界征服はできたのか、漫画は返せたのか、罪は償えるのか。
誰も知りえない。彼らのもう終わる未来。

神様だけが知っている未来の話。

どこかの少年たちは三日前に、錆びれたビルの屋上から手をつないだまま闇に落ちた。

西の青年たちは、世界が終わるその瞬間ステージに立っていた。

死にたがりの彼女と彼は、いつものように部屋で漫画を読んでいた。

人殺しの兄弟は、どこかの裏路地で最期は互いにナイフを突き立てた。

違った終わり。いろんな最期。

『あーあ。思ったよりあっさり終わっちゃった。』
『だから終わらせるの早いって言ったじゃん。』
『だって世界見てるの退屈なんだもん。』
『さて、次はどんな世界がみれるかなぁ。』

神様の気まぐれはいつも突然に。


この世界のカラクリに誰が気づけるでしょうか。


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