shibasuco
神様の気まぐれでこの小さな世界は終わることになりました。 互いに依存しあう彼らの最期を神様は楽しみにしていました。 さて世界が終わる一週間前。 「ねぇ、世界終わるらしいよ。」 「あぁなんか朝のニュースで見たわ。」 「どうする?何する?」 「俺、お前と二人っきりで死ぬって決めてたんだけど。この調子だと無理っぽいな。」 「えー諦めちゃうの?やろうよそれ。」 「なに?おれと死んでくれんの?」 「ふはっ。喜んで!」 「世界終わるんやって。やばない?」 「やばない?って軽すぎやろ
ある男が死んだように眠る女の隣で手紙を書いていた。 男は時折女の顔を愛おしそうに見つめ、ほほ笑んだ。 世界が終わる3時間前のことだった。 僕から君へ 今僕は隣で眠る君に手紙を書いています。 君は僕らが生きるこの世界が明日終わってしまうことを知っていますか。 きっと君のことだから知っていても僕には教えてくれないだろうけど。 君に出会うまで僕にとってこの世界はなんとも生きづらい場所でした。 息苦しくて面白いほどつまらない。目に映る人はみんな、僕も含めて汚れていました。 そんなこ
少女は恋をした。 ある夏の日、退屈な宿題を投げ出して近くの海を訪れた。 いつもは人っ子一人いないその海岸に今日は先約がいた。 真っ黒なロングヘアーに真っ白な肌のその少女を見た瞬間、世界がなんだか違って見えた。 これが恋だと、私の中の誰かが言った。 一目惚れなんて、漫画の中の話だと思っていた。 でも確かに私は今恋をした。 声も知らない彼女に。 まるでこの世界にふたりぼっちだと錯覚するような何もない海岸で彼女は私に気づくとほほ笑んだ。 「待ってたの。」 どうして彼女が私のこ
目の前で生涯の相棒が死んだとき、死ねない彼は死ぬほど自分のからだを憎いと思った。 永遠に老いることもできず、怪我をすることもできず、死ぬことも、ましてや自分の血を見ることさえできないのだから。 彼は幾度も悩んだ。自分は怪物だ、血も赤くないのかもしれないと気が狂いそうになった。そのたびに助け舟を出してくれたのは紛れもなく腕の中で目を閉じる相棒だった。 「お前は俺と同じだ。ちゃんと人間だよ。だって誰よりも人の痛みがわかるじゃないか。」 何度も何度も「死にたい」と嘆く自分にそう語り
高3の夏。 隣の席の彼が自殺した。 いつも彼は笑っていた。ひたすらに優しく、周りに好かれ、信頼も厚く、完璧だと誰もが言うような人間だった。 いたるところの光をかき集めたような、僕には眩しすぎるやつだった。 窓際の後ろから二番目、隣の席。 きっとクラスメイトからすれば、それしか僕らの関係を言い表せる名前はなかった。 教室では少しの「おはよう。」くらいしか話したことはなかったが、彼は僕を友人だと言った。 あれは高2の春。 授業をさぼって屋上で寝ていたら、真面目なはずの彼が来た。