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<体験記>世界一のレストランに行ってきた:Disfrutar(2024/11/7 12:45~)
The World's 50 Best Restaurantsで2024年に栄えある1位となったバルセロナのDisfrutar。
2017年以降55位→18位→9位→5位→3位と順位を上げ、ついに!というタイミングで私自身の人生初のバルセロナ旅行が決まり、当然ながら365日前から予約を受け付けているDisfrutarは満席。旅行が決まってすぐにキャンセル待ちを入れたものの、連絡が来ず(それはそう)。
最後の手段として(ここでは書きませんが)打った手が功を奏し、10月29日に予約が取れたとの連絡が。急いでお土産を買い、旅行の準備をして当日を迎えました。
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ちなみになかなか雑多なお店群の中にあります
12時半入店、12時45分開始での予約。入ってすぐ右手にスツールとカウンター(Pastryの調理がされる場所?とのこと)があり、簡単な待合のような場所になっています。店内は(HPによると)ニノット市場の錬鉄、ミロニア陶器の色彩にインスピレーションを受けているとのことでお店全体が優しい色彩、そして陶器に包まれています。様々な伝統的な文様等がモチーフにされているようですが、私の英語力が低すぎて全ては聞き取れず。
カウンターを抜けるとすぐに右手に大きなオープンキッチンが広がり、左手にはPatisserieを専門とするキッチンが。薔薇の花びらのお皿が準備されているところでした。
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オープンキッチンにはEduardとOriolがいらっしゃり、握手と共に英語と日本語でご挨拶をしてくださいました。嬉しい。
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キッチンを抜けると一気に開けた空間(White Space)が広がり、奥には飲み物等を楽しむガーデンがあるとのこと。
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私たちは一番キッチンから近い、少し奥まったところの席を頂きました。お隣はアジア系の方だったように思いますが、その方以外はほぼ欧米系の方、という印象。
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白と茶色で落ち着く色合い
最初にサービスのVinyetさんから「28品、約4時間あるので、休憩もお手洗いも自由に行ってね。でもキッチン側の準備があるから1,2品前にその旨を教えてもらえると、とっても助かるわ」とのこと。
飲み物はアルコールペアリング11杯のみでノンアルコールペアリングはなし。モクテルが選べたので私はそちらを頂くことにしました。
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この形がDisfrutarのモチーフになっています
話しているとまずDisfrutarのお料理の背景に潜む言葉のご紹介。
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わくわくしながら紙を見ていると、さっと紙が回収されて(「待って!」と写真を撮らせてもらったのが上のもの)、一皿目が登場!
特にメニューを選んでいませんが、初来店ということで自動的に「DISRUTAR CLASSIC」になったようです。
DISRUTAR CLASSIC
Frozen passion fruit ladyfinger with rum - 2016
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パッションフルーツのカクテル、との説明。繊細だから出来たら一口でね、とのこと。食べたか食べてないか分からないくらい軽い食感で爽やかな酸味が広がる一皿。下は上を支える為の飴細工。
The beet that comes out of the land - 2014
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黒ゴマで満たされた大きなガラスの器を大きくサービスの方が回すとビーツのメレンゲが登場!そんな登場の演出が楽しい一皿。
同時に供される薔薇の花びらの後に一口で食べてね、と言われます。
Lychee and roses with gin - 2014
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薔薇の花びらに繊細に乗せられた雫に左から順に薔薇の花びらをスプーンのように使って食べてね、と言われます。「花びらは食べないでね」と言われますが、お隣の説明を聞くと、どうも強度を付けるために純粋な花弁ではなくファイバーで作られた?もののようで。ちゃんと薔薇の香りがした気がするので驚き。
両端はライチ(とたぶんジン)の雫、真ん中は白いフランボワーズではなく、作られたフランボワーズ。ライチにジンの少し大人なニュアンスが加わり、なんだか色っぽい。そこにフランボワーズの爽やかな酸味がぴったり。
一緒に提供されたビーツのメレンゲと食べると、あら不思議、ぐっとフランボワーズの風味が立ちます。正直ビーツの味が分からない…!
言われた順番で食べてしまったので元のメレンゲの味が分からないのですが、本当にビーツのメレンゲだったのだろうか…と思うぐらい。不思議な食体験でした。
Flavor concentration: sprouts - 2023
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Less is moreとgameを体現した一皿とのこと。個人的に一番楽しかったお皿。
それぞれの「芽」の下にはトマトのジュレが敷かれており、それぞれの芽を食べてからトマトジュレで一度口をリフレッシュしてから次の芽を食べてみてね、とのこと。
それぞれの野菜の味がぐっと濃縮したような芽の食べ比べ。楽しすぎる。
Liquid salad - 2015
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胡瓜の泡の上にはトマトの泡。
ガスパチョのようにさらっと頂けてしまう飲み物。中にはオニオン、ターメリック?の小さな球体が忍ばされており、突然「ぷちっ」とくるのでビックリ。そんなサプライズも楽しい。
Tomato "polvorón" and arbequina Caviaroli - 2014
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トマトのポルボロンにオリーブオイルのキャビア。一口目はポルボロンだけで、二口目はオリーブオイルのキャビアと一緒に食べてね、とのこと。
口に入れるとトマトの酸味が一瞬香り、次の瞬間には消えている。瞬間の味を楽しむ一皿。
ちなみにこの二つは一緒に提供されました。
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Vodka/Truffle - 2019
トリュフを付けたウォッカとのことですが、ウォッカの香りがかなり強く私はトリュフの香りが取れませんでした…
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"Panchino" / filled with caviar - 2016
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Disfrutarのアイコンとも言うべき一皿。Chinese Banとの説明。さくさくふわっふわの揚げパンの中にはサワークリームとキャビア。キャビアの塩味が心地良く、ストレートに美味しい。揚げたて最高。
Solid bubbles of smoked butter with caviar - 2018
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ふわふわのバターの泡に虫眼鏡がついてくる、そんなプレゼンテーションが楽しすぎる一皿。小さな人もいます。泡を発生させるアクアリウム(水槽に酸素送り込むポンプみたいなやつ)でバターを泡にした後に一度凍らせた?もので、虫眼鏡で是非その泡の細かさを見てみて、とのこと。
前のお皿もキャビアだったのでキャビアを色んな形で味わおう!というお皿順なのかしら。
下のカリカリのパンと最初はふわふわバターだけで、二口目にキャリアと食べてね、とのこと。バターのふわふわとパンのカリカリの対比が楽しい。
なおバターの泡はすぐに溶けるので手がベタベタになりました。仕方なし。
Amaranth coral with oyster and codium emulsion - 2022(メニューに記載なし)
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照明に映ったタルトを奥から取ろうとすると…ない!どこ!?
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実は真ん中が鏡になっていて超手前に本物がいるのでした。
「まずは目で見て、味や食感を想像してみて」とのことですが、キャビアといくらと…なんか下に苔生えてる…と特に下の部分は全く味の想像がつかず。
実際頂くと想像以上に超クリスピーで、中はとってもクリーミー。更に上のキャビアやいくらのぷちぷち感が楽しく、海を口いっぱい感じる一皿でした。
Gazpacho sandwich with scented vinegar garnish - 2016
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トマトメレンゲのパンにガスパチョのソルベを25年物のへレス(シェリービネガー)と一緒に。ヘレスだけ香ると独特のツーンとする深い香りがあるのですが、サンドイッチを食べながら嗅ぐと何故かトマト味がぐっと強くなる。不思議。面白い。美味しい。好き。
Disfrutar's Gilda with marinated mackerel - 2017
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ピンチョスのヒルダをDisfrutar風に。オリーブは中が液体なので一口で食べなきゃいけないやつ。右端はパッションフルーツ。サバの上下はアンチョビかな。オリーブオイル、ケッパーにギンディージャ(バスクの青唐辛子)のソース。このソースの酸味と辛味のバランスが素晴らしく、食感は違えど構成する味は完全にヒルダで楽しい。ここまで、食べながら無意識に笑顔になってしまうお料理ばかりです。
Crunchy mushroom leaf - 2018
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キノコを濃縮させたような味にかりふわっという食感が面白い。マイクロウェーブ(電子レンジ)でカリカリにしたよ、とのこと。ミルクせんべいのような軽さはどうやって出したんだろう。
Crispy egg yolk with warm mushrooms gelatin - 2014
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「上だけ軽く食べてから中身を卵に入れてね」と言われます。さくふわの衣の中には黄身のソース!それをキノコのゼリーにかけて頂くという一皿。キノコと卵なんてそりゃもう美味しいのですが、このプレゼンテーション可愛すぎでは。
Marinated mushroom vinegar with oyster - 2022
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キノコを発酵させたものに牡蠣。キノコは先ほども出来てきたアクアリウムを使って発酵を進めているそう。左から右に食べてね、とのこと。発酵の酸味があるので少し好き嫌いが分かれるやつ。牡蠣は全くクセがなく、とっても美味しかったです。キャビアの次はキノコを味わう流れなのかしら。
Multispherical pesto with pistachios and eel - 2017
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Disfrutarといえば、のジェノベーゼソースのつぶつぶ。ピスタチオ、松の実にチーズ、イベリコ豚の生ハムという組み合わせ。eelがいたのはメニューを見て初めて気づきました。つぶつぶはまんまるなのにテクスチャーは完全にソースでちょっと頭が混乱します。色々な組み合わせで楽しみながら頂いた一皿。
Our macaroni alla carbonara - 2014
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このお皿が大好きでした。イベリコ豚と塩だけのコンソメマカロニを使ったカルボナーラ。本物のパスタではないのですが、アルデンテ風食感で食べ応えもある。上から目の前でカルボナーラクリームのエスプーマと胡椒、パルメザンチーズを振りかけてくださいました。みんなが知ってるカルボナーラをこんな風に再構築されるとは。楽しすぎる。
Hake "Suquet" - 2016、Cappuccino "Suquet" - 2016
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Hakeとは「メルルーサ」という魚のことのよう。アリオリソースにサフランを加えたもの、一緒にカプチーノが供されます。
Suquet(スケット)はカタルーニャの「魚介類、ジャガイモ、ニンニク、トマトを使用した煮込み料理」のこととのこと。ほろりと解ける最高の火入れでお魚料理として頂いてしまったのですが、ストレートにとっても美味しかったです。
The goose that laid the golden eggs: fried egg of crustacean - 2021
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そーっと女性が持ってきた器にはなんと金の卵が!ワクワクして待ってると卵焼きになって登場!
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冷静に考えるとちょっとシュール…笑
そこにエビやアメリケーヌソースと甲殻類が一緒にやってきます。このアメリケーヌソースがめちゃめちゃ美味しかった…!味付けはチリクラブのような感じ。
Multi spherical tatin of corn and foie - 2016
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見た目はつぶつぶなのに食感はつぶつぶではなくなめらかで視覚と食感の違いが面白い一皿。下はフォワグラ。ストレートに美味しい一皿でした。
Squab with amasake kombu spaghetti, almond and grape - 2022
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火入れが完璧なピジョンに甘酒ソース、昆布スパゲティ。日本のものがたんまり使われていて、思わずにやりとしてしまう。甘酒のやさしい風味がピジョンに絡み、昆布スパゲティと頂くと昆布締めしたような味わいに。個人的にはどこかほっとする一皿でした。ちなみに左上がアーモンド、右下がブドウです。タイトルが分かりやすい。
(メニューを見て初めて「Squab」が若い鳩肉を意味すると知りました…Pigeonと言ってくださったから分かったけどSquabと言われたらなんのことやら状態だったわ…)
Homemade cider smoked at the moment - 2016
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たっぷりドライアイスの入ったフレンチプレスのコーヒーメーカーに、何かの液体が注がれしばらく待ちます。もくもく目に楽しい。最後、目の前で燻した香りを纏わせたグラスに注いで完成。味わいはリンゴサイダーのような感じでした。
Musings on walnuts - 2018
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たぶん人生で初めて胡桃を割ったのですが、中からチーズが!どうやって入れたの!?メニュー名の「Musings on walnuts」は「胡桃についてじっくり考える」という意味。完全に相手の手のひらで転がされている気分で最高。楽しい。味はひねりなく胡桃とチーズ。
Green walnut with idiázabal cheese - 2018
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さっき剥いた皮まで食べちゃうのがDisfrutar。でもまさか胡桃を皮ごと食べられるとは思わなくてサービスのお兄さんに改めて訊いてしまいました。
熟す前の青い胡桃を殻ごとじっくりシロップにつけたもので、味わい的には酸味のないほおずきの果実のような印象。右はより熟成がかかったものかな。こちらは濃厚な酸味のないシェリーのような印象。チーズの泡の中にはきゅんと酸っぱいライム?の果実。上にはパリッと生ハム(たぶん)。手前は胡桃だったかな。
Rose water - 2023
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目の前に薔薇の花が来て「手を出して」と言われます。
手を出すと、バラの花が大きく振られ、薫り高い薔薇のエキスが。
口に含むと口から鼻腔までバラの香りが広がり、とてもラグジュアリーな気持ちに。
Engagement rings - 2023
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こういう時なかなか決められない系女子です
バラからのこの流れは本当に卑怯…!(褒め言葉)
数多くのEngagement Ringの中から一つ選んで、と言われます。柚子だったり、ガナッシュだったり。様々な味。思わず指にはめて遊んでしまったけれどそれが正しい楽しみ方だと思います。
Hoisin cucumber - 2018
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お酒がかなり入っていたので記憶がぼやぼやですが、きゅうりのアイスにジンジャーのグラニテ、その下には中国のHoisin(海鮮醤)の辛味がなかなかしっかり。なかなかこれは難しいお皿でした。
Black sesame cornet - 2017
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黒胡麻にヨーグルトクリーム。比較的ストレートな一皿。
Black apple with noisette butter ice cream and flourless puff pastry - 2022
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一番左のBlack appleは2ヶ月じっくりと熟成させたもの。ねっとりとしたアルコールのないカルバドスのような風味です。
バニラクリームと右にはナッツのバターアイス。上に載っていたものはメニューを見るに「小麦粉を使わないパイ生地」のようですが記憶がぼんやり…申し訳ない…
Petit fours: Pineapple Rock. Basil leaf. Raspberry marshmallow. Matcha tea rock. Chocolate and passion liquid bonbon. Cotton candy
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ちなみにこの最後のプティフールが出たのが16:40頃。入店したのが12:30なので、本当に4時間経ってます。計31皿(プチフールも別々にカウントすると)34種。圧巻。
私の食材や調理に関する英語の用語の知識不足、またカタルーニャ語やカタルーニャ料理への造詣が深くないことが災いし、サービスの方のご案内の3割も取りきれていなかったと思います。2月にドイツ、オーストリアでレストランにお邪魔した時もそうでしたが、これは本当になんとかしたい。
それでも「楽しむ、享受する」という意味を持つ「Disfrutar」を言語を飛び越えて間違いなく感じられる素晴らしい体験でしたし、面白さと美味しさが共存することにも驚きでした。
世界一のレストラン「Disfrutar」は世界一Disfrutarに満ちた最高のレストランでした。また機会があれば是非お伺いしたい、と心から思います。ごちそうさまでした。そしてありがとうございました!Moltes gràcies!
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