<我思う、ゆえに我あり>退職前夜
15年半勤めた会社を明日、辞める。
今月に入ってからは会社のパソコンやスマホのデータを整理したり、引き継ぎをしたりしてきた。でもそれは仕事だ。いつもと少し違う仕事をしているだけ。
実際、明日辞めるというのにまだ処理出来ていない仕事もある。まるで退職気分なんて味わわせてたまるかというがごとく、ギリギリまで続く日常。でもそれがまた私らしいな、なんて思う。
先々週から退職のお菓子を配り、お世話になった方々にご挨拶を始めた。
でも実感なんてまるで湧いてこない。旅行のお土産を配るかのような、他愛もない雑談のような気軽さ。15年半の重みなんて全くないし、重みの付け方も分からない。
明日はいよいよ最終日。着ていく服を決める。いつもより少しちゃんとメイクをしよう、と心に決める。それでもいつも通り、夜更かしもスマホゲームもしている。なんでもない毎日と同じ、今日という一日。きっと明日もいつも通り電車に乗り、いつも通り出社して、感傷に浸りながらもいつも通りの道を歩き、いつも通り私は家に帰るのだろう。
明後日からはそんな「なんでもない毎日」は「何もない毎日」に変わる。
それは一体どんな感覚で、私は何を思うのだろう。自分のことなのにまるで分からない。
でも分からないから、ほんの少しだけ楽しみ。