RED U-35 10th ANNIVERSARY AFTER EVENTファイナリストの饗宴 -能登と紡ぐ食の希望-
RED U-35というコンペティションは知っていましたが、対象が35歳以下の若手の料理人ということもありオーナーシェフは少なく、お名前を伺っても「…どなただろう?」となることもしばしばあり。
そんな中、2023年のファイナリストの皆様は個人的に気になっていた方ばかりで、そんなファイナリストが揃ってしかも東京でコラボレーションランチをするとなれば万難を排して伺います、よね!
そんなメンバーは…Dining around notoで感動するほど美味しいハンバーグを提供してくださった「レストランブロッサム」の黒川シェフ、「Respiracion」で素敵な笑顔で細やかなサービスをしてくださった西山シェフ、そしてずっと気になっているのにまだ行けていない筆頭の「里山十帖」の穴沢シェフ、「枯朽」の清藤シェフ、そしてお若いながら料理長となられた「ESqUISSE」の山本シェフと、私の”気になる”が揃った皆様でした。熱すぎる。
能登の食材を使う、という共通項がありつつも、五者五様にお皿の上で表現される形、味、香りはどれも本当に素晴らしく、新しく、美味しく、皆様のこれからが益々楽しみになるお料理ばかりでした。
グルメな方が多いイベントだったので、参加者同士で話が盛り上がり、特に後半は完全にお料理の説明を完全に聞き逃しております。ご容赦ください。
アミューズ 結い目
甘海老 天草(レストランブロッサム・黒川シェフ)
下のざくざくとした生地と甘えびのねっとりとした甘さと食感が合わさり(ちょっと変な表現ですが)フレッシュな海老フライのような食感に。Dining around Notoで頂いたときには小さな一口サイズでしたが、今回はしっかり甘海老が一尾乗っており、更に天草に透けるエディブルフラワーが見た目もぐっと洗練されて美しく。
レストランブロッサム自体は洋食屋さんのイメージなのですが、黒川シェフのこの美的な感性と再構築力は本当に素敵。コース料理をちゃんと頂きに行かねば、と思うアミューズでした。
能登葛 白山胡桃(Respiracion:西山シェフ)
4月末にResipiracionさんで出会った白山の胡桃にまた出会えるとは思わず、嬉しいサプライズ。
砂糖を使わず、胡桃と能登葛でシンプルに仕立てられた胡桃豆腐は朴葉の香りでアミューズとしてばっちり立ち位置を確保。「里山料理」という言葉がしっくりくる一皿です。朴葉の香りを生かしながら、胡桃の旨味や甘みを葛で口溶け良くさらりと仕上げるところに西山さんの感性と柔らかい人当たりを感じます。彼のサービスは気が付かないくらい自然で、温かくて、ゲストに居心地の良い空間を届けようというお心を感じる素敵なものなのです。
元々白味噌好きなのもあり、別添えの胡桃の殻、大豆、白味噌のソースが素晴らしく美味しくて(写真は撮りそびれました)。
それだけ後でスプーンで舐めてみよう(お行儀悪い)と思ったら回収されてました…残念。どこか素朴でほっとするアミューズ。
ホヤ パッション(枯朽:清藤シェフ)
ホヤ独特のえぐみが一切感じられないことに驚きつつ、パッションやバイマックルでエキゾティックに仕立てられた一皿。一口目にファーブルトンのパッションの香り、二口目に色々(たぶんいしりとか紅茶とか)混じってぐっと味と香りが一気に立つ構成。三口目以降は徐々にこれらがデクレッシェンドしていく。これは衝撃的な美味しさ。このアミューズで「枯朽」に行こう、と心に決めました。
蕗の薹 山独活(里山十帖・穴沢シェフ)
口の中で噛めば噛むほど深く強く絡まり合っていく食感、香りが素晴らしい一口。上にはサクッと揚げたての蕗の薹のフリット。山菜達のやさしい苦みと旨味に、本鱒の柔らかな美味しさ、そしてそんな具材に負けない食感で丁寧に炊かれたご飯と、一つ一つの丁寧な仕事が伺えました。
仔牛 蕪(ESqUISSE・山本シェフ)
蕪で仔牛をくるんだ一口。見た目はシンプルながらも仔牛の余韻がとてつもなく長く、しかもどんどん味わいが変化していき、面白い。仔牛の旨味が来たと思いきや、甘さが来たり、スパイスの香りが来たり、少し辛みが来たり。スパイスの配合や蜂蜜、味噌に秘密があるのかしら。「能登を想う気持ちが膨らむことを願います」とのコメントですが、膨らまざるを得ないくらい余韻が長く楽しく、しっかりと想いが膨らみました。
前菜 開花(ESqUISSE・山本シェフ)
烏賊 加賀太胡瓜 ハーブ
つい先週、ほぼ同じ食材の組み合わせをNOTO NO KOÉで頂いたばかりで、メニューを見ながらお皿が出てくるまでちょっとソワソワしましたが、そんな杞憂は全くもってただの杞憂でした。
八朔やハーブで爽やさを演出しつつ、加賀太胡瓜は薄く食感を楽しむものと、少し大きめにカットしたものを。そこにキウイジュースの酸味、昆布締めにされたアカイカのねっとりとした甘みが乗り、ハーブのマヨネーズでコクをプラス。
柑橘やキウイの酸味とハーブの香りが華やかで、個人的にはとても女性らしく素敵な一皿だと思いました。前菜として最高の爽やかなスタート。
前菜 未来へ(Respiracion:西山シェフ)
稗 能登猪 一休寺納豆
なんと最終審査のお料理を出してくださり、これまた嬉しい想定外。杉のオイルからなのか少し青い香りがありつつも(あとで調べたらお煎茶っぽいですね。納得)、それよりも猪なのか、何かぐっと強い旨味の感じる出汁(これも後で猪白湯と判明)にぷちぷちの稗がとてもよく合う。添えられたスープは能登猪の旨味たっぷりの濃いコンソメに一休寺納豆の独特の風味がふわり。アミューズの胡桃豆腐がやさしい味わいでしたが、こちらは比較的はっきりとした味わいで西山シェフのバリエーションの幅広さを感じるお皿でもありました。
初めての味なはずなのに、すっと身体に馴染む不思議なお料理。
Noto高農園さんの杉(今回はオイルで使用)は先日のRespiracionで高光さんも使われていた記憶があるので、そんなレストランの中の繋がりも感じて個人的に少しニコニコ。本当にいつから杉って食材になったの。
魚 逆波(枯朽・清藤シェフ)
平鱸 シラモ うきは茶
サーブされた瞬間の海苔のような香りが素敵で。
外観は海の中に住む平鱸をイメージしたお皿だと聞いて、とても納得。
ばりばりの衣の中にはふわふわの平鱸。
まるで海を覗き込んだような、嗅覚&視覚的にはそんな印象があるお皿。付け合わせの貝と泡のソースがめちゃくちゃに美味しい。シラモ以外にも海葡萄のような海藻など色々使われていて、香りや食感の違いが面白い。海の中を旅するようなそんな一皿。
肉 恩恵(レストランブロッサム・黒川シェフ)
能登牛 キハダの実 クレソン
黒川シェフといえば…ということで、Dining around Notoでも頂いた能登牛のハンバーグ。ふわふわで旨味が凝縮されていてソースがまた美味しくて。
付け合わせにはポテト(これもめちゃめちゃに美味しい)、空豆、エンドウ豆等。お豆の下には緑のソース(クレソンかな)。
周りのお席の方とお話が盛り上がり過ぎて説明を聞き逃しましたが、皆様召し上がりながら「美味しいね」と笑顔が溢れていました。世の中にはこんなに大人を幸せにする、身体に沁みこむような美味しいハンバーグがあるんだな、と改めて。
デザート 感謝(里山十帖・穴沢シェフ)
ミルク 苺 百花
引き続き説明は聞き逃しました。食いしん坊が集まるイベントなので、仕方ない。
「面白い!こんな味、初めて食べた」とおっしゃっている方もおられましたが、私はとても好きでした。
パリッとさせた桜の葉にミルクと蜂蜜?のアイス、苺のソース、下には少し苦味のある春のニュアンス。とても構成が美しく料理人なのにデザート作れるのすごいなぁ…と思ってたら元パティシエさんとのことで。すごすぎる。
そんな五者五様のお料理を一同に頂けた今回のイベント。
こんなに素晴らしい若手料理人がおられるなら日本の飲食業界の未来は間違いなく明るいぞ!そう確信しました。「能登と紡ぐ食の希望」そのもののイベントだと感じました。ごちそうさまでした。
日本を離れる前の西山シェフに会えたのも嬉しかった。お気を付けていってらっしゃい!