【邦画】Shall We ダンス？（1996）

監督：周防正行
出演：役所広司、草刈民代、竹中直人、原日出子、柄本明など
上映時間：２時間１６分

「Shall We ダンス？」鑑賞しました。作品自体はもちろん知っていたのですが、鑑賞は初めて。実は1996年公開とかなり昔の作品なんですね。

ボタン会社の経理課長である杉山正平（役所広司）はごく普通で生真面目なサラリーマン。妻と娘の三人家族で所沢のマイホームで暮らしている。ただどことなく人生に物足りなさを感じていた。いつも通り電車で帰宅しているとき、ダンス教室の窓際で佇む女性（草刈民代）を見つけ、その悲しげな姿にどこか惹かれていく。そしてある日意を決して杉山はダンス教室を訪れる。彼女は岸川舞といいダンス教室の教師をしていた。杉山は家族に内緒でダンス教室に通うことに。

ただ岸川の個人レッスンは高く、安価のグループレッスンを受けることに。徐々にダンスが上達していき毎日が楽しくなっていくが、ある日のレッスン終わりに舞を食事に誘うと「私目的ならダンス教室に来ないでほしい」と言われる。舞は実は世界大会にも出場したことのある一流のダンサーで、ダンスへのこだわりは人一倍強く、自分目的でレッスンに参加している生徒に嫌悪感を抱いていた。

一方夫の帰りが遅くなり怪しく思った正平の妻は、探偵会社の三輪（柄本明）に正平の調査を依頼する。やがて旦那がダンス教室に通っていることを知り、浮気ではないと安心するが、なぜダンスなのかわからずどこか腑に落ちない。

正平は舞にきつく言われた後より一層ダンスに打ち込むようになり、グループレッスンの先生の勧めにより同じ教室の生徒の豊子（渡辺えり子）と一緒に大会に出ることに。

いやー、めちゃくちゃおもしろかったです！！！我々の日常生活に限りなく近い親近感のある世界観で、程よい笑いと絶妙な恋心ものぞかせ、ダンスを通じて絶妙な人間模様も描いている。コメディであり、ロマンスであり、ヒューマンドラマであり、アクション（ダンス）もある。まるでインドお得意のマサラ映画を日本版にエディションしたような作品。

まずは社交ダンスという題材が秀逸です。社交ダンスってなんか絶妙におもしろいですよね。そして1996年当時はまだそこまで日本で社交ダンスは認知度は高くなく、そこにやってくる人たちもやはりどこか変わっています。そしてそれが故の社交ダンスに対する世間の偏見もうまく物語に取り入れています。

役者陣も最高でした。主演の役所広司は、圧巻の演技力だなと。日本人でここまで自然な演技ができる人はいないのではないでしょうか。でも自然なだけでなく、ドラマ性を持たせる重厚さもあります。役作りも相当緻密に行われています。日本で一番演技で魅せれる俳優だと思います。

そして竹中直人！おもろすぎる！！特に最初のダンスシーンは大爆笑しました。顔がウザくて、動きも吐息もいちいちうるさい（笑）。逆に言うとおもしろすぎて不自然なのですが、この映画においてはコミックロールとして完全に振り切っており、いいキャラクターでした。自然な演技をすることだけが優秀な俳優ではなく、求められた役割を完璧にこなすことが優れた俳優であるのだと認識させられました。実際に会社内での彼のバレエチックな動き（ターンなど）はかなり繊細で、演技自体は非常に細かいのです。

一方の柄本明はコミカルな役回りだけど、ナチュラルな演技。通常笑いとは自然からずれた状態で起こるので、自然さとコミカルさを共存させるのは実はとても難しいと思います。探偵として正平を追いながらも、実は自分も社交ダンスに惹かれていくというおもしろいキャラでした。

演出も素晴らしいです。特に自宅から自転車で駅まで向かうシーンの４段活用は、正平の心の状態をダイレクトに表していておもしろかったです。

「Shall We ダンス」は社交ダンスを通じて普通のサラリーマンの生活の変化を描く物語。笑いあり、涙あり、ドラマありと２時間ちょっととは思えない満足度でした。過去観た邦画の中ではベスト！