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【邦画】それでもボクはやってない(2017)

監督:周防正行
出演:加瀬亮、役所広司、瀬戸朝香、もたいまさこ、山本耕史など
上映時間:2時間23分

「それでもボクはやってない」初鑑賞しました。当時ちょっとした流行語だったことを覚えています。周防正行監督作品なのですが、なんと前作の「Shall We ダンス?」以来11年ぶりの監督作品とのこと。たしかに前回よりも役所広司がだいぶ歳を重ねていました。

都内に住む26歳フリーターの金子徹平(加瀬亮)は就職面接に向かう朝の満員電車内で、女子中学生から痴漢の容疑をかけられて、駅員室に連行される。徹平は容疑を否認するものの警察に連れていかれる。刑事は徹平の無実主張を全く信じず、弁護士からは示談で済ませる妥協案を持ち出される。しかし徹平は無実を主張し続ける。

痴漢の裁判で無実を勝ち取ることができる確率はなんと約0.1%。徹平は心が折れかけるものの、新たな弁護士の荒川(役所広司)や須藤(瀬戸朝香)のサポートもあり徹底抗戦の姿勢を貫く。母親(もたいまさこ)や親友の達雄(山本耕史)らも事件の目撃者を探し奔走する。

徹平らは再現ビデオを作成したりと無実を証明できる証拠を固めていく。裁判官も検事側の証拠が不十分であると考えており、裁判は若干徹平側の有利で進んでいた。しかしその裁判官が突如移動となり、検事側寄りの室山(小日向文世)に変わってから、裁判に暗雲が立ち込める。

この作品が公開された当時、僕は小学6年生だったのですが、近所のおばちゃんから「もしこれからの将来で痴漢に間違われることがあったら、やっていなくても逃げるのがベストの選択だよ」と言われたのを思い出しました。完全にこの映画の影響を受けての発言だったのですね。

そしてこの映画でも言われていた「痴漢裁判の有罪率は99%」というのも事実で、実際に証拠はそろいづらいし、一度起訴されてしまうと覆すのは至難の業とのこと。男性側としては恐ろしい限りです。このような事例に巻き込まれないようにするためには、やはり手を上にやったり、誰からも見える位置に置いたり、誰が見ても触っていないと分かるポジション取りが必要になってきます。

しかしこの映画が問題提起しているのは痴漢云々ではなく、日本の裁判制度そのもの。先週に見た「三度目の殺人」でも言われていましたが、裁判官は裁いた件数が評価の対象になります。なので一つの裁判に時間をかけていると、裁判官としては評価が下がっていくことになります。なので裁判官としては内容云々よりも、早く裁判を終わらせて数をこなしたいのが本心なのです。

そして裁判官は無罪を出しづらい。なぜなら無罪を出すというのは、イコール検事・警察側を否定することで、要は司法にたてつくということになります。そうなるとこれもまた評価を落とす対象となり、必然的に出世コースからは外れてしまいます。もちろん有罪にばかりしていればいい訳ではありませんが、無罪判決を出すのにはそれなりの勇気と能力が必要なのです。

この作品と「三度目の殺人」の両方を観て、これが全てではないとしても、日本の裁判制度に疑問が残るのは事実です。実際に日本の裁判での無罪判決率は他国よりも低いとのこと。ほかにも検察側からの圧迫的な取り調べや、拘留期間の長さなどの理由で、無実の罪を着せられているケースはかなり多いと見ます。裁判官や検事というよりも、制度そのものがどうかと思います。

演出はさすがの周防監督。BGMなども最小限で、物凄くリアルな演出でした。緊張するシーンの連続です。役者陣もみなさん素晴らしかったですが、特に目を引いたのは途中から裁判官になった室山を演じる小日向文世。本当にいやらしくて、観る人は全員嫌いになったことでしょう。こういう名悪役はとても貴重です。

「それでもボクはやってない」は日本の裁判制度に疑問を投げかける作品。特に最初にスクリーンに浮かび上がる言葉と、最後の徹平の独白のセリフが全てだと思います。終わり方にも周防監督のメッセージが見えて、僕は大好きです。

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