【洋画】セブン(1995)
監督:デヴィット・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グヴィネス・パルトロー、ケヴィン・スペイシーなど
上映時間:127分
「セブン」二度目の鑑賞。前回観た時には救いようのないラストシーンに驚嘆。インド映画のハッピーエンドばかり見ていた自分には、あのラストの耐性がありませんでした(笑)。ただものすごく好きな作品の一つ。
話は月曜日からスタート。退職まで一週間のベテラン刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と血気盛んな新人刑事のミルズ(ブラッド・ピット)はある事件現場に向かう。そこにはものすごい肥満の男がスパゲッティに顔をうずめたまま死んでいる。死因は食べ物の大量摂取と食事中に腹を殴られたことによる内臓破裂。のちの鑑定で男は何者かに銃を突き付けられていたことが判明し、殺人事件と認定される。
火曜日。弁護士のグールドが自宅の高級マンションで死亡。死体は
贅肉がちょうど1ポンド切り落とされていて、現場には被害者の血で「GREED(強欲)」という文字が残されている。サマセットは月曜日の事件の被害者の胃袋にあったプラスチックの破片から、現場の冷蔵庫裏に被害者の脂で書かれた「GLUTTONY(暴食)」の文字と、事件の始まりを示唆するメモ書きを発見する。
サマセットはこれらからカトリックの「7つの大罪」をモチーフにした犯行だと推測。彼は事件の担当を断るが、相棒のミルズに事件解決のカギとなる七つの大罪に関する書物である「神曲」と「カンタベリー物語」を読むように手紙を渡す。しかし彼には難解すぎてミルズは要約本を購入する。
まず構成力が見事です。これだけの複雑で深い内容をたった2時間で纏めてしまうのは神業。めちゃめちゃ濃密な2時間に仕上がっています。物語も1週間と作中の期間が短いがゆえに集中力が途切れることなく鑑賞できる、「12人の怒れる男」と似た構造です。
中でもラスト30分は一瞬も目を離すことができません。特に最後の現場に向かう車内の会話は圧巻の一言。台詞一つ一つの重み、モーガン・フリーマンの説得力、ケヴィン・スペイシーの迫力、ブラピの熱量、息をのむシーンの連続。
キャラクターも秀逸。ジョン・ドウの知的で猟奇的な犯人像は「羊たちの沈黙」のハンニバル博士にも通ずる所があります。ビクターが犯人と見立てられた際にサマセットが「多分違う。こいつには奥がない」と言うように、知力とは奥深さであり、深いほどキャラクターは魅力的になります。そういう意味でも自分自身ももっと教養を身につけなければと思う次第です。
ケヴィン・スペイシーはこの手の役を演じさせたら天下一品。同じ年に「ユージュアル・サスペクツ」にも出演しており、このような傑作を同年に二本出すなんて、この年は完全に彼の年だったんだなと。前述の二本と「アメリカン・ビューティー」は彼の大好きな映画です。
モーガン・フリーマンの安定感も凄まじい。ミルズとは対照的に精神的に落ち着いていて説得力がありながらも、過去に何かがありその危険性も秘めている。特にダーツのシーンはめちゃくちゃ怖かった。「ショーシャンクの空に」の囚人役や、「インビクタス」のネルソン・マンデラ役など、演じる幅も広い。彼が出ていれば名画確定といっても過言ではないほどです。
オープニングの演出はピカイチにかっこよい。そして恐怖をあおるBGMも良い。監督のデヴィット・フィンチャーはこの映画で名をあげることになり、のちに同系統の「ファイト・クラブ」や、まったく趣の違う「ベンジャミン・バトン」なども監督します。
「セブン」は3人の主演俳優とカッコいい演出、そしてめちゃくちゃ練られた脚本力が光る名作。特にラスト30分は圧巻。最後はマジで救いようがないけど、だからこそ記憶に残る。