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「ビール傘」プレゼント編
毎日毎晩遅くまで働く母さんのために傘を買った。妹と二人で少しずつおこづかいを貯めて商店街の洋品店に行くと売れ残った女物が一本。柄の部分は透きとおった小麦色。小さな気泡がぷつぷつと入っている。開くと白い生地が泡のようにふわっと広がる。きれいだね。うん、なんだかビールみたい。二人で笑った。その夜異変が起きた。病弱で寝たきりの父の部屋から言い争う声。あれ? 母さんにあげた傘がない。あれか?アハハ飲んじまったよ。開いた口がふさがらない私たちをよそに母さんはいいのよ仕方がないわ、早く寝なさいと促した。
『数十年後。ずいぶん久しぶりに会う妹だ。どう元気?問うまでもなく顔色は悪くお世辞にも幸せそうに見えない。お姉ちゃんこそ。言い返されて私も力なく微笑む。あたしたちやっぱりあの親の血を受け継いでしまったんだね。ダメな男に惹かれてしまう母の血、黄金色の泡に溺れてしまう父の血だった』
ねえこれを見て本当に反省すると思う?あの二人。
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