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「二段お重人格ごっこ」玉子焼きは山吹色編
祖母は二段お重のおシゲと呼ばれていた。仕出し弁当屋の女将である。注文を受けて30分以内に上段におかず下段にごはんが詰まった重箱を風呂敷で包んで届ける。上段のおかずは冗談抜きでおいしい。下段のごはんにはどんなデカダンな人をも思わず大勝したと錯覚させる力がこもっていた。
ある日のこと、四角いリュックを背負ったライダーがうちの前に止まった。誰かが出前を注文したのかしら。違った。祖母からの二段重だ。あまりの軽さにたじろいた。
紙切れが一枚。
「おシゲの名跡をお前に譲る」
そして二段目の箱にはお約束の通帳と印鑑が。おばあちゃんゴメン。私にあの玉子焼きはムリだよ。でも惜しげもなくくれた遺産は有り難く頂戴します。すると人格化した重箱が
「まあ細かいことゴチャゴチャいわんでやってごらん」
さらにトーンを変え
「ところで重以外にも音読みあるのにな郵便とか」
後で知ったのだが祖母の本業は裏金の運び屋で弁当屋のほうは余技のゴッコ遊びだった。
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たらはかに様の企画の裏お題に参加しています。