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「タイムスリップコップ」退院編

「父さん(おじいちゃん)、おかえりなさい」
子どもたち、それに孫たちがずらりと並んで藤兵衛の帰りを笑顔で迎えた。
「うむ、出迎えご苦労じゃ」
テーブルの上には娘たちと嫁たちがいつになく仲良く腕を振るった料理の数かずがところ狭しと並んでいる。藤兵衛の好きなウイスキーには冷蔵庫の炭酸水が、冷凍庫の氷が今や遅しと出番を待ち構えている。
「あー皆の衆、ここでワシの話をきいてくれ。今日は本当にありがとうな。まさか生きてこんな日を迎えることができるとは。感無量じゃ」藤兵衛の背後から一人の女が現れる。入院先の看護師さんだ。
「この度この人と入籍しようと思う」
家族は唖然とした。
「婚姻届も、この通りちゃんとあるぞ」
あれ?あれ?懐にしまったはずなのに!
「おお思い出した、あの紙を折ってな、タイムスリップ紙コップにしたのじゃ。若いころの健康な検体でこの通り無事に退院出来た!」
訳のわかっていない小さな孫が叫んだ。
「よかったね、じいじ!」

406文字

藤兵衛さん糖尿病で入院していました。結果が良かったのはタイムスリップ紙コップのおかげ? 家族はホッと。いえいえ今度は認知症の疑いが😫⁉️

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