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私も家事が好きになる

 お入りなさいと言われ進路指導室に入ってきたのは梶くんだ。
「将来の話をする前に一つ相談があるのです」先生は優しく「いいですよ」と答える。
「ご存知でしょうが僕って男子はもちろん女子に人気がないのです」
そりゃあ、あなた、どんなに手を尽くしても感謝の言葉どころか当然だと言わんばかりの態度だし、俺と仲良くしなければ酷いぞと脅すし、全くお礼も出さないシブチンだし、あなたと仲良くすることの世間の評価の低さでしょうね、誰とだってツルむから選良意識くすぐられないし。なんてことはもちろん口に出さない。もっと優先的に仲良くしたい「シゴトさん」「レジヤくん」「シュミちゃん」のことも。
「困りましたね。あなたがもっとモテるように懸賞金つきでアイデアを募集しましょうか」「ありがとうございます。では本題の僕の進路ですが、会社を経営をしようと思うのです。梶カンパニーといって、大勢の人を雇用して労働してもらうのです」
「どんな仕事ですか」
「従業員をよその家に派遣して掃除や洗濯や料理や家族のお世話をさせるのです」
「なるほど」
「疲れて帰宅すると自分の家のことは、別のスタッフさんの手でスッカリ片づいている。どうですか、素晴らしいでしょう」
「つまり、労働の対価としてお給料をもらい、誰かにお給料を支払うのですね?」
悪くないかも知れない。専業主婦としては心を傷つけられる無職無収入という肩書からの解放が期待できる。
「受け取る給料から所得税が引かれます。誰かに支払う給料には消費税が上乗せされます。そうなれば国の税収は増加するでしょうね」
だけどあれもこれも自分でチャチャっとやってしまえば「全部タダ」「節税」。実は二つともみんなの好きな言葉なのですよ。

「ねえ先生、もしもシゴトもレジヤもシュミもこの世からいなくなったら。そうなったら、もう少し僕のこと、好きになってくれますか?」梶くんが後ろ手に扉を閉めた。

787字

本田すのう様の #私も家事が好きになる にエントリーしようとしたのですが、これはなんと選ばれると賞金が出るようなのです。つまり、自分が書きたい記事というより、選者の読みたい記事をを書く必要があるのです。恐らく読者にとって「有益」で「笑える」「感動的」「ほっこりする」さらに「本当に家事が好きになってしまう」内容が期待されているのです。単にお題に沿って予想外のオチだのを思いつく端からろくに推敲もせずに投稿しては落選してもしても駄作を連発し続けるような書き方とは対照的といえる企画のようです。それでもつい書いてしまいました。ごめんなさい。

誤字脱字のご指摘を受け一部直しました。

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