爽やかな ①
爽やかな秋の空が広がっている。地球と同じ。見たところ砂の上にいるのは僕だけだ。足元に干からびてカサカサになった何かがある。「やあ」
真紅の大輪が声をかけてきた。
「キミを見たことある。小さな窓から鈴なりに顔を出しているから何人いるんだと数えたら、なんと一人だけ。体は一つ頭はたくさんなーんだ。答えは君さ、鈴蘭くん」
「そういうキミは?」
「僕は、、◯リスだよ」
「百合なの?」
「好き勝手に分類させておくさ。ルイ13世が僕の歌を作曲したんだ、炊飯器まで僕の歌を歌うんだ」
こんなところに来てまでマウント合戦とか虚しくないか? 彼は止まらない。
「王家の紋章を知ってる? フルール・ド・リス。あれはアイリス(あやめ)で虹の女神だよ。ア、マ、イリス、わが王家に捧ぐ? それが恋人に捧げる歌になったのかも知れないんだ」(自説)
よくしゃべるなあ。だんだんと身体が軽くなっていくのがわかる。
「僕だって、百合の仲間だ。谷間の。小説のタイトルみたいだろ?」
ああ、虚しい。
この星に送り込まれる経緯は同じだ。ブーケトスされた僕らを運良くキャッチできたのに何らかの理由で素直に受け取れなかった、かと言って捨てることもできなくてこの星に飛ばすのだ。
でも、まあ、君に会えてよかったよ。
おやすみ。
530字
星新一「薄暗い星で」のオマージュです。
青豆ノノ様×PJ様「ブーケ・ドゥ・ミュゲ」から想を得ました。せっかくの素敵な企画に雑な作品を投稿してしまい、また「二人はいつも」で新橋がカブっていたのに気づかず申し訳ありませんでした。
チズ様の「人生は洗濯の連続」はハッとさせられる名作でした。アマリリスのメロディを歌う洗濯機。創作のヒントをいただきました。
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