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「音声燻製」近所迷惑編

 とっておきの物件がありますと紹介されたのは駅から徒歩5分の2LDKで礼金なしの月一万というものでした。余程のボロ家に違いないと覚悟を決めて見に行ったところ、意外にも瀟洒なマンションだったのでその場で契約しました。その決断を後悔したのは数日後です。上階の住人はタップダンサーだとかで昼夜を問わずうちの寝室の真上のフローリングの部屋で稽古に余念がないし、階下からはボリュームを最大にしたスピーカー音が絶え間なく響いているし、左隣のDVカップルの罵声と悲鳴、そして困るのは右隣から「うるせえ!」と怒声がうちに向けられることです。さらに四軒とも愛煙家で少しでも窓を開くと煙が流入します。開けなくてもえぐい粒子がヒタヒタとしみ込んできました。

 騒音と煤煙の環境に慣れていたのにあの夜いち早く煙と『火事だ!』の声に気づいたことが不思議ですか? あの部屋以外は皆親戚で音声燻製実験なんてやるから四軒同時に出火したのかも知れませんね。

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