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音声燻製 空耳編
あのひとは通販で物をかうのが好きだ。パソコンは使えないので、テレビを見ては電話をかけて取り寄せる。ある日大きな鍋がテーブルの上に鎮座していた。テレビショッピングは自宅のスペースと商品のサイズを冷静にイメージできないと失敗する。もちろん他にも落とし穴はいくらでもあったが、家の中はこうした一見便利だけど場所をとるし結局使わない品々で溢れていた。
「燻製器よ。チップでいろいろな物を焙って香りをつけるの」
「いりません。そのまんま食べる方が健康的です」
といった意味の言葉を遠回しに返したと思う。
スマホを見ていたら燻製器が紹介されている。あれどこかにあったはず。物置の奥からサルベージした。まだ使えそう。手軽な材料と手頃な素材をかき集めて着火。
『ハヤクイナクナレバイイノニ』
確かにそう聞こえた。この鍋はいったい? 『デモホントウハナカヨクシタイカモ』
鍋に刻まれた文字は、
want to say, couldn’t say
408文字
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