数学ダージリン ①

　冷蔵庫にパイがあったはずなのに。温めたポットにティースプーンで茶葉を入れる。1、2、ポットのためにもう一杯。
「お茶がはいったわよ」
息子は返事もしない。また数学に手こずっているのだろうか。こんな問題を見つけた。
円柱形のマグカップの底面の半径をrとする、上から●センチまで注ぐと何ccの紅茶ができるか。円周率は3とする？　私は割り切れない気持ちでいっパイになる。
「ママ、紅茶入れないで」
どうして？　家族ペアの紅茶を注ぐと熱でビッシリ書き込まれた数式が浮かびあがる数学大辞林カップだ。だが息子は、内側が六角柱になった新しい物を手にしているではないか。
「どうして紅茶を入れたらダメなの？」
エヘヘ、と頭をかきながら隠してあったパイを見せる。
「彼氏の分だよ」
クロゼットから男の子が
「初めましてポットです」と姿を現す。

そう。だからもう一杯用意してたのよもう一人呼んで雀卓囲みましょうね数学のあとで。

元から六角だったんだヘイキさごん。


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たらはかに様のお題に参加しています。