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涙はすべての感情のゴールなのだ。

涙は女の最後の武器なのよ。

そう教えてくれたのは、10代の頃に働いていたシティホテルの先輩。当時、つきあっていた子とケンカをして、相手に泣かれたけどおれは許さなかった、みたいな青臭い話をしたんだと思う。
先輩は女性で、その頃の年齢は30歳。19歳のわたしからすればとても大人で、相手を許さなかった自分を「だっせえやつ」そして「つめたいやつ」と反省させるにはじゅうぶんな説得力だった。

その人よりはるかに大人になったいまでも、女性の涙は最後の武器だと思っている。つまり、女性の涙にはめっぽう弱い。

この話をすると、経験豊富な殿方やご婦人がたの2人に1人は「ハッ!」と鼻で笑い「女性はうそ泣きができるからね!」とたしなめられる。

まあ、それは分かっているのだけど、最後の武器を出されてまで、戦い抜こうとは思わないというか戦意を喪失してしまう。

「しばいぬさんは泣いとけばチョロイ」と思われてしまっていい。どうせ争いなんて、どちらかが引かなければ終わらないのだから、弱点が多いほうが長期戦にならなくてよい。

そんなこころがけでいると、女性に泣かれる事態にならないよう配慮して生きているつもりなので、ここ何年かは奥さんの涙も見ないで済んでいるような気がする(感動の涙は別)。

ちなみに、人の喜怒哀楽は、どの感情も極まった先には「泣く」。
人は、喜んでも泣くし、怒っても泣くし、悲しくても泣くし、笑っても泣く。感情の最上級はすべて「涙」につながっている。

だから涙が出たら、いったんそこは感情のゴールなのだ。

たとえば爆笑したときは「あーおもしろいー」と思ったあとに涙を拭く。「腹いてー」ともなるね。でもそれ以上、笑いの感情をふくらますことはできない。

くすぐられたときなんかそうでしょう。涙が出て、さらにその先にも笑いの感情を求めたら、それは次第に苦痛になるし、笑いじゃなくなる。

他にもたとえば、だれかにプレゼントをあげて、喜んでくれたらうれしいですよね。でも、泣いて喜んでくれたら、もっとうれしい。あげて良かったと心底思える。

でも、さらにその先の喜びの感情を相手に求めたことはないと思う。なぜなら、それ以上に相手に喜びが伝わる表現はこの世に存在しないからね。
だって泣くほど喜んで、そのうえ踊りながら叫ばれたとしても、次にこちらが思うのはうれしさではなく、若干の戸惑いじゃない。

だから涙が出たら、それは感情のエンディングロール。
良くも悪くも”区切り”なのだ。
笑いや喜びであれば、もっと余韻を楽しみたいと思うかもしれない。
もし怒りや悲しみであれば、いちどそこで区切って次に進みたい。
だから涙は女の最後の武器なのよ、でいいのだと思う。

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