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期末棚卸について


はじめに

期末棚卸とは、
今期の仕入金額を把握し正しい粗利を導き出すために必要な作業で、
①今期の仕入金額の合計に
②前期から繰り越した商品があれば、その仕入金額の合計を足して
③棚卸した期末在庫の仕入金額を控除する

ことで今期の仕入金額(売上原価)を確定する作業となります。

ここからは具体的な数値例をもとに説明します。
数字が苦手な方は眠くなります。

期末在庫をもとに当期の粗利を計算

そもそも粗利(売上総利益)の計算方法は
売上-仕入(仕入原価)=粗利(売上総利益)
が基本の計算で、この仕入(売上原価)は
今期に売り上げた商品の仕入金額のみ使用します。

仮に
今期に商品を500円で30個仕入(仕入15000円)
1個あたり2000円で20個販売(売上40000円)
期末在庫は10個だったとしたら(在庫5000円)
※これが1年目で前期の仕入はないものとする

売上-(前期繰越額+今期仕入額-期末在庫)=粗利
40000-(0+15000-5000)=30000
が今期の粗利となります。
1個あたりの粗利は30000円÷20個=15000円/個
と正しい数値が求められます
期末在庫の5000円は来期に繰り越します

前期に繰り越した商品をもとに来期の粗利を計算

来期に入り、とりあえずここでは新しい仕入はない(0円)として考えて
残った10個を1個あたり1500円で売り切ったとしたら

売上 1500×10=15000
仕入 5000+0=5000
期末在庫 0

よって
売上-(前期繰越額+今期仕入額-期末在庫)=粗利
15000-(5000+0-0)=10000
が粗利となります。
1個あたりの粗利は10000円÷10個=1000円/個と正しい数値がでます

誤って期末在庫を控除しなかった場合

これを誤って期末在庫の5000円を控除しなかった場合

同じ数値例
今期に商品を500円で30個仕入(仕入15000円)
1個あたり2000円で20個販売(売上40000円)
期末在庫は10個だったとしたら(在庫5000円)
で計算すると

今期の粗利は
40000-15000=25000
と少なくなります。
また1個あたりの粗利も25000円÷20個=1250円/個
と正しくない数値が出ます

来期の粗利も、上で控除しなかった5000円は
このタイミングで仕入費用に入れられないので
15000-0=15000
と多くなり、1個あたりの粗利も15000円÷10個=1500円/個
とこれも誤りとなります

棚卸を行わず、期末在庫の仕入金額を控除しないことで
正しい粗利を計算することができなくなってしまうことが分かりますでしょうか?
また、この誤った方法が認められてしまうなら、
利益が多い年は年末に大量の商品を仕入れて経費を多く計上してしまうことで
その年の利益を少なく見せてしまうことが可能
になってしまいます

この先は記帳方法の話です。簿記に興味がない方は大変苦痛かと思います

三分法について

商品を仕入れた時に仕入という勘定項目で仕訳を行っているのであれば、
皆さんが普段している記帳方法は三分法と呼ばれるものです。

三分法とは、商品売買の仕訳を
①仕入(費用)
②売上(収益)
③繰越商品(資産)
の3つで仕訳する方法です。

メリットはシンプルな記帳方法なので
日々の販売における仕訳が簡単にできます
デメリットは正しい粗利を求めるために期末に棚卸が必要になります

先ほどの
①商品を500円で30個仕入
②1個あたり2000円で20個販売
③期末在庫は10個
を仕訳に直すと

①仕入 15000 / 現金等 15000
②現金等 40000 / 売上 40000
③繰越商品 5000 / 仕入 5000

となります。

そもそも三分法では商品を仕入れた時に仕入勘定で経費を先に計上してしまうため
まだ仕入(費用)として認められない期末在庫を仕入金額から控除する必要(仕訳③)が出てくるのです

売上原価対立法について

ちなみに他の記帳方法で
売上原価対立法(簿記2級では「販売のつど売上原価に振り替える方法」といわれる)というものが存在します
こちらは商品を仕入れた時、仕入勘定ではなく商品勘定を使用
そして商品販売時に、販売した商品の仕入値を売上原価に振替
を行う記帳方法です。

同じ数値例
①商品を500円で30個仕入
②1個あたり2000円で20個販売
③期末在庫は10個
を仕訳に直すと

①商品 15000 / 現金等 15000
②現金等 40000 / 売上 40000
 売上原価 10000 / 商品 10000
③仕訳なし
となります

売上40000に対し、売上原価10000なので
粗利30000円が仕訳の時点で導き出されます
残った商品の在庫も15000-10000=5000円と分かりますので棚卸は不要です。

このように売上原価対立法のメリットは商品を販売したタイミングで
その商品の売上原価が計上されるため、商品ごとの粗利を把握することが可能となります。棚卸も不要です。
デメリットは販売の都度、商品勘定を売上原価に振替する(仕訳②の2行目)ため、単純に仕訳の作業量が増えるのと、
販売した商品の原価を仕訳時に調べる必要があることです

このデメリットが記帳作業を大変にさせてしまい、日々の販売業務より記帳作業に時間を割く必要が出てくるため、期末棚卸という作業があったとしても三分法が採用されるケースが多い理由となります。
売上原価対立法はPOSレジ等を導入しており、仕入れた商品の個数・原価をシステム上で管理ができ、販売時に自動的に該当する商品の在庫の引き落とし、及び原価の把握ができる企業向けとなります。

最後に

以上のことから、個人で販売事業を行っている方は三分法での仕訳が適切
期末棚卸は三分法で仕訳をする上で、正しい粗利を算出するために必要な作業となります。

年末に忙しい作業が出てきますが、間違いのない期末棚卸を行いましょう


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