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「学びとはかくあるべし。」2021年7月12日の日記

・今日は午後休をとっていたので、午前中にテレワークをして早々に仕事を切り上げると、わたしはノートとペンを用意して午後の準備をした。


・東京都美術館のアート・コミュニケータとしての講座が今日は午後にあるから。
・何度も日記に書いているので説明を簡単にするけれど、都美館のアートコミュニケータの活動の一つに、都美館の学芸員の方々や、様々な大学の教授やNPO団体の代表の方々から、講義を受けるというものがある。


・講義は「鑑賞」、「アクセス」、「建築」の3ジャンルに分かれていて、今年わたしは「鑑賞」と「アクセス」の2つを受講している。
・その「鑑賞」講座の第1回が今日開かれたのです。
・各講座はそれぞれ開催の曜日が固定されていて、鑑賞講座は月曜日の午後。7月から2月にかけて、全7回。


・わたしは普段カレンダーどおりの勤務をしているので月曜日は仕事だけれど、いまは年次も高くないし都合をつけやすいので、今年は何度か月曜日に休みをとって、この講座を受講することにした。


・今日の講座のテーマは、上記のリンク先にあるように、「鑑賞について」。講師は都美館の学芸員の稲庭さんに講義いただいた。
・途中、休憩を挟んでたっぷり3時間。「鑑賞」とはどういうことか?ということについて、都美館での実際の取り組みを振り返りながら講義をしていただいた。


・とてもおもしろかった。
・内容について詳しく書くことは避けるけれど、特にわたしの首が縦にブンブン振られたところ2点についてピックアップして感想を書き残す。



・まず1つ目は、都美館の過去のイベントから。
・その活動の内容は次のような流れ。
・とある小学校の児童たちが、学校の行事で都美館を訪れて展覧会を見学した。その後、児童たちは後日教室で見学したことを振り返り、各々自分が気に入った作品について、音声ガイドを自分たちで作った。
・自分たちで原稿を考え、録音して、クラスみんなで作った手作り音声ガイドが完成した。
・また後日、児童たちはふたたび都美館のその展覧会を訪れて、今度はその音声ガイドを使って、家族たちと一緒に鑑賞をした。


・彼ら彼女らは、これだけの手間をかけて、展覧会や作品について理解しようとしていた。
・わたしはこの一連の活動を見て、「“わかる”ってそういうことだよね」と思った。


・わたしは、あることについて「わかろう」と思って勉強するとき、何か1冊本を読んだだけで、1時間番組を見ただけで、1回講義を受けただけで「わかったような」気になってしまう、おろかなところがある。


・だけれど、本来「わかる」とは彼ら彼女らのように、時間がかかって、手間がかかって、繰り返し実践することを言うのだと考え直した。
・アートコミュニケータの活動は、鑑賞者とともにコミュニケーションを取ることも多い。即物的な「わかる」ではなくて、継続的な「わかる」を提供できるように、また自分自身もそのことについて考えられるように活動していきたい。


・2つ目も都美館の過去の活動から。
・今度は中学生向けのプログラムで、ある中学校の生徒たちが、あるひとつの作品について勉強し、(その作品は1人の男性が画面中央に立っているという作品なので)その作品の構図を真似して、自分が立っている様子を街なかで写真に撮ってみようというもの。


・子供たちは班に分かれて街へ飛び出し、どこか良いスポットを見つけては、そこでさまざまなポーズを撮っていった。作品の男性を真似たポーズを取る子。面白がってボディービルダーみたいなポーズを取る子。
・子供たちは作品の姿を実際に体験することで、作品の理解を深めていった。


・思い思いの写真を楽しそうに撮ったあと、この体験はどうだったか子供たちにインタビューをする場面があった。
・そこで、ある男の子が、「最初は写真を撮ることにあまり乗り気ではなかったけれど、みんなで撮っているうちにだんだん楽しくなってきて、ずっと暗い気持ちでいるのって実は大変なんだなと思った」とコメントしていた。


・「ずっと暗い気持ちでいるのって大変」とは、なんと良い言葉だろう。


・彼にとっては、仲の良い友達と街でカメラを持ってはしゃぎ回ると、思わず暗い気持ちではいられなくなるという、なににも代え難い発見があったらしい。


・子供たちが面白がりながらさまざまな写真の撮り方を考えて、地面に這いつくばったり、カメラを見下ろすように撮っていたりして、楽しみながら発見を重ねて言う様子もとてもよかった。発見とはこうした楽しい営みの中で見つけていきたいものである。



・講座はまだ第1回目を終えたところ。まだまだ続きがある。これからもたくさん「鑑賞」について勉強して、そこで得た素材をわたし自身の実生活と接続させて、わたしなりの解釈と活用法を見出していきたい。

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