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「埼玉の前川建築『埼玉県立歴史と民俗の博物館』に行く」2022年8月11日の日記

・埼玉県には、埼玉会館、県立自然の博物館と並ぶ素晴らしい前川國男建築がある。

・それが「県立歴史と民俗の博物館」。

・わたしはこの頃母校や東京都美術館をはじめとする、前川國男の建築を全国めぐっていたのだが、埼玉という近場にありながらこれまで行けていなかったこの博物館にようやく行くことができた。

・この博物館を知るまで、わたしは母校の講堂に最も似ている前川建築は熊本の県立美術館だと思っていたのだけど、「前川さん、すべて自邸でやってたんですね 前川國男のアイデンティティ」という本を読んでこの博物館の写真を見た時、熊本県立美術館以上に母校との兄弟感を感じて、ぜひ見に行きたいと思っていたのだった。


(ちなみに母校を取材した時の、1年前くらいに出した記事↓)


・博物館の最寄り、大宮公園駅前の景色は「理想的な田舎の夏」でとてもおすすめです。


・大宮公園は広々していて気持ちいい。目立つ弓道場のすぐ隣に「埼玉県立歴史と民俗の博物館」はあった。


・前川建築ではお馴染みの「網代貼り(あじろばり)」タイルを踏み締めて右へ左へと何度か折れていくと、ようやく博物館の入り口に辿り着く。
・大きな建物だけど高層ではない上、正面が大きなガラスで視界が抜けているので、重々しかったり狭苦しい感じがしない。建物の正面にいるはずなのに緑の自然も青い空も十分に摂取できる。


・入り口までの道中で歴史成分も摂取できる。



・外壁はお馴染みの打ち込みタイル。


・前川自身が「竹筒をつなげたような」と表現した独特の照明。空間を広く天井の高いホワイエは、土日やイベント時に多くの人が来ても息苦しさを感じさせない、国立音大の講堂のホワイエと同じ効果がある。


・受付ぽいところ。


・ホワイエの一角に「前川コーナー」があり、建築家、前川國男と、この建物についてのキャプションが展示されていた。

・歴史と民俗の博物館の外壁部分の特徴であり、前川建築特有の特長でもある「打ち込みタイル」の解説文もあった。施工方法までキャプションがある。


・ホワイエから階段を上がって2階部分にはお土産やさん(ミュージアムショップというより「お土産やさん」という雰囲気なのだ)とレストランがある。

・屋内の席のほか、テラス席にも出られる。
・眺めの良い、人の動きが見えるところに食事の場所があるのもまた前川建築の特徴のように思う。


・歴史と民俗の博物館の、建築に対する力の入れようはものすごい。
・これは常設展の観覧券(300円!)に加えて、館内に置かれているパンフレットなのだが、まさかの博物館の建築を解説するパンフレット2種類もある。

・複数種類だけでなく、そのクオリティもものすごい。


・これ作った人、これ作ってる時楽しくて仕方なかっただろうな〜〜〜〜〜ということが伝わってくる。
・やりたいことをやりましたという感じがする。大変良い仕事を見た。仕事の成果物としてのパンフレットも良いし、その出来から想像される過程もまた良い。


・パンフレットを眺めているうちに、レストランで注文していた中華丼が出来上がった。


・写真が横だけど直すのがめんどくさいのでそのままで。


・お昼を食べたら1階に降りて展示を見に行く。
・…のだが、ここではとても良い柱を見ることができるので、これをわざわざ見過ごしてはいけない。

・コンクリートのこの柱。

・底面は八角形ぽい形に。

・天井にぶつかる上の部分は十字のようになっていて、この両端の間をなめらかに形が変わっている。

・コンクリートだが木目調であたたかい印象を受ける。


・じゃあ展示室の方へ行きます。


・この大きな石の石塔婆は、確か、偉い人の供養塔婆なのだ。(記憶)
・これほど大きいものは全国的に珍しくて、埼玉県の特徴だった気がする。


・展示は、「歴史と民俗」という名前の通り、石器時代に始まって、縄文〜奈良〜室町戦国〜江戸〜明治〜現代と、長い人類史をたくさんの模型やイラスト、キャプションでなぞっていく動線になっていて面白かった。

・現代に近づくにつれて、模型が実物に置き換えられて、一層展示にリアリティが増してくる。同じ実物の展示でもなぜか、博物館の実物の展示は、美術館の絵画作品の実物と違って、「事実」の成分が濃く感じる。そう感じるのはおそらく、博物館で展示されている多くの「製品」は、美術史の文脈には無いし、その評価軸からは外れて、ある時点における定点を示すためのピンのような役割のためにそこに展示されているからだと思う。


・博物館内はほとんどガラガラだったけど、展示室のあちこちにボランティアの方がいらして、お願いすればいつでもガイドしてもらえる環境だった。実際に、別のお客さんや、中学生くらいの結構若い人も、ボランティアのガイドを受けているのを何度か目にした。

・前川っぽい赤色のカラーリング。
・前川っぽいというよりは、コルビュジエっぽいと言うべきか。


・常設展示の最後の方のフロアで見られるお庭。前川は竹が好きだと思う。福岡市美術館にもあるし、林原美術館にもあるし・・・。


・いっぱい書いたけど、この翌週くらいにわたしは青森県の弘前市へたくさんの前川建築を観に行くことになるので、今回はこの辺にします。


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