【短歌日記】穿たれて絵を掛けてまた埋められる画廊の壁のごとき我が頬 2023/08/13-2023/08/19
2023/08/13 押入れに『蛍雪時代』ふりつもり夜食を喰らう若き父見た
うたの日「蛍」。
「蛍雪時代」は大学受験生向けの雑誌名で、言うまでもなく夏も冬も苦学する「蛍雪の功」から来ているのだろうと思うのだが、私の中では断然冬のイメージが強い。紅白で歌う「蛍の光」の印象が強いせいだろうか? 真冬の午前2時にぬるいうどんをすする受験生がどうしても想起される。
2023/08/14 大の字を犬にするべく集まった兵どもの足跡を追う
うたの日「好きな山」。
故郷のお盆では、祖先向けの交通誘導灯とすべく山の表面を「大」の字に焼く。毎年山に忍び込んで「大」を「犬」なり「太」なりにしようとする輩がいるという都市伝説を聞くけれど、本当なのだろうかと思いながら詠んだ歌。
調べたら秋田県では2017年、公式に「犬文字焼」が開催されたらしくちょっと感動する。
2023/08/15 おばちゃんと打って出てくるスタンプは白髪ばかりでナメとんかワレ
うたの日「おばちゃん」。
LINEのサジェスト機能で出てくる「おばちゃん」は全員白髪だったのである。いや、白髪が生える時期は個々の体質によるだろうし、白髪が悪いわけでは全然ないのだが、「おばちゃん」にしては老いを強調しすぎていないか? と反発したい気持ちになった。「侮るなよ」と言いたくなる。
でも、書いている内に老い=弱さなのか? とも思えてきた。生きていれば必ず今以上に老いていく私が抵抗すべきは、そちらの価値観に対してのような気がする。
2023/08/16 友達はみんな焼けたとだけ言った祖父に返せる相槌は無く
うたの日「戦争」。
祖父の小学校時代の話を聞いていたときに、ふと出てきた一言だった。何を言っても薄っぺらくなる気がして、「そっか……」とだけ返して別の話題に変えた。逃げてしまったという苦い感情とともに記憶に残っている。
2023/08/17 ねこきつねかんがるーみなえほんではきいろい(ベージュは高価ですので)
うたの日「黄」。
ディック・ブルーナ的な絵本をイメージした。多分ベージュが高いせいではないと思うけれど。
2023/08/18 穿たれて絵を掛けてまた埋められる画廊の壁のごとき我が頬
うたの日「穿」。
所用でインパクトドライバーを初めて使用したのだが、非力すぎてネジ一本を壁に押し込むために5分以上かかってしまった。さらにネジ穴を潰し、家主の方にペンチでねじねじ抜き取ってもらうという体たらく。
もって生まれた不器用さはもうどうしようもないが、とりあえず負荷が重めのホットヨガのレッスンをもっと受けようと心に誓った。
2023/08/19 登録を誘うメールを一つずつスワイプし消す丁寧な日々
うたの日「録」。
スマホの使い過ぎを防いで適切な距離感を保とう、という内容の書籍『デジタル・ミニマリスト』を読み、早速影響されてスマホからXのアプリを消すなどする。
仕事を含めれば、どうせ毎日のスクリーンタイムは8時間を超す。スマホに触る時間をちょっと短くしたところで一体何の意味があるのだろうとも思うけれど、本を読む時間を少しでも増やしたい。
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