黒柴的パンセ #17
黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #7
ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく
「言われたことだけやれば良いと思ってた」
これも、パンセ#16で取りあげた役員Cと話したときの言葉である
パンセ#16では、役員Cが「苦手だ」≒「だから、やらない(やらなくてよい)」という考え・行動が、社内に透けてみえており、社員に影響を与えていると書いた
今回も、経営層の考え・行動が、社員に透けて見えているという話である
この話の発端は、あるプロジェクトだった
このプロジェクトは、取引先の9割以上がSIerである自社には珍しく、エンドユーザ企業(ソフトウェア開発を行わない一般企業)が受注先だった
なぜ、この企業からの受注につながったかというと、役員の知り合いだったSIerのマネージャZの転職先であり、マネージャZ経由でその企業の基幹システム更改があるので、見積もりに参加してみないか?という引き合いがあったからである
しかし、このプロジェクトは盛大なトラブルとなった
システム更改なので、基本的には現行仕様を踏襲し、かつ改善が必要な機能について追加・改修を行うだけで良いのだが、その現行仕様を整理した資料がないため、要件定義を一から始めることになった
見積もりを行った際は、エンドユーザ側にマネージャZがいることから、マネージャZが整理してくれた要件を元に、要件定義書を作成すればよいと考えていたようだ
しかし、マネージャZもシステム部のマネージャとして転職しただけなので、エンドユーザ企業の業務すべての詳細を把握しているわけでない
そのため、営業、経理、物流、カスタマー対応など各部門のマネージャと、自社のエンジニアが打ち合わせを重ねて、要件定義していく必要があった
結局のところ、自社はこの要件定義作業を持て余していた
要件定義フェーズはなかなか完了せず、次工程以降の作業スケジュールに影響が出てしまい、中途半端な状態で外部設計、内部設計、製造と無理やり工程を進めてしまった結果、大炎上となった
黒柴は、途中からこのプロジェクトにトラブル対応として巻き込まれたのだが、事前に役員Cと打ち合わせをした中で、「あなたは、このプロジェクトをどのように遂行しようと思ってましたか?」と質問した
答えも「自社がプロジェクトを主導する」、「言われたことだけやれば良い」の2択としたのだが、その回答が「(マネージャZから)言われたことだけやれば良いと思ってた」だった
今回のプロジェクトは、上流にSIerがおらずエンドユーザ企業との直接取引である
その中で、知り合いとはいえ、エンドユーザ企業側に開発のマネージメント・推進を全て委ねるつもりだったのだろうか?
ただ、役員Cは明確に「言われたことだけやれば良い」と社内向けには発言していない
しかし、こういう考え・行動はプロジェクトメンバーには透けて見えていたようだ
例えば、スケジュールの遅れを取り戻すために、マネージャZが「一部の開発作業をエンドユーザ企業側で巻き取る」という提案を、検討・確認もなく役員Cは受け入れてしまった
それ以降、その作業の担当メンバーも、「向こうが巻き取ると言ってきたのだから、自社はもう関係ない」と、その作業の内容・進捗について確認すらしなくなった
本来、このプロジェクトは自分たちが推進していく必要があるのだが、メンバー全員が「言われたことだけやれば良い」と常に他人事なのだ
パンセ#16と重ねて諸兄らに問うが、諸兄らの会社の経営層は、こういう悪い影響を及ぼす考えが、透けて見える行動をとっていないだろうか?
また、社員はその影響を受けて、「言われたことだけやれば良い」と考えていないだろうか?
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