黒柴的パンセ #45
黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #30
ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。
「Kさんは、書かなくていいって言うんですよ」
これは、出張作業に行った後輩Mから聞いた話である。
このときの出張作業は、黒柴とMが行く予定で準備を進めていた。
しかし、予定日の2日前くらいになって黒柴がインフルエンザに罹患してしまい、急遽Kが行くことになった。
Kは、自社の創業時のメンバーで、ほぼ役員待遇のマネージャだった。
しかし、技術力はあるという評価だが、マネジメント能力に乏しく、特定の分野のビジネスを行うというよりは、無任所マネージャとして忙しそうなプロジェクトのサポートに作業者として駆り出されるような立ち位置だった。
このときも、Kのスケジュールが空いていたので、黒柴に替わってMと二人で出張作業に行くことになった。
前述したように、作業内容の確認や手順書、メンテナンス用のスクリプトなどはすでに準備済みでリハーサルも実施し、Mが内容をきちんと理解していたので、KはMの作業を監督(とは言え、作業を隣で見ている程度だが)するということで同行することになった。
黒柴は、出張作業を行うときに常に作業日報を記録して、それを作業終了時にSIerのエンジニアと読み合わせた後に提出して、作業を完了するようにしている。
メンテナンスの対象は、自社の資産でもSIerの資産でもない、SIer経由で自社にメンテナンスを依頼してきているエンドユーザの資産なのである。そのため、どのような作業を行い、その結果がどうなったかをきちんと報告する義務があると思っている。
これは、仮にメンテナンス作業以降にトラブルが発生し、その原因がメンテナンス作業ではない場合に、自らの身を守る証跡になるとも考えているからだ。
(別の機会で、メンテナンス作業後にハード故障が発生し作業内容を疑われたが、作業日報を記録しており、その内容を確認されたうえで無関係と判断されて、お咎めなしとなったこともある。)
無事、作業が完了し、出張から戻ってきたMに作業日報を確認するから、所定のファイルサーバに格納するようにと依頼したが、作業日報を書いていないと言う。重ねて理由を問いただしたのが、冒頭の言葉である。
Kは、「書く」というスキルが壊滅的にない人だった。
後日、別件でKに資料作成を依頼した時に、作成された資料をそのままSIerに提出したのだが、SIerの担当者から「この資料を読みましたか?これで、問題の内容が分かりますか?」とクレームに近いメールをもらってしまった。
遅ればせながら読み返すと、問題の内容の説明がぼやけていて、その対策も問題の内容とリンクしておらず、SIerには謝ったのちに黒柴が書き直したこともあった。
結局のところ、Kは自身が苦手とする「書く」という作業から、逃げたがっているのだ。パンセ#16では、自社内には暗黙的に
「苦手だ」≒「だから、やらない(やらなくてよい)」
という感じが蔓延していると書いたが、Kの場合は立ち位置としても上位のであり、そういう人が明示的に「やらないてよい」と言ってしまっているだけに罪深いと思う。
また、Kのそういう態度に他の役員も「致し方ない」とお手上げ気味で、そこを是正することなく、追認しているような状況である。
かくして自社には「書く」、「書いて残す」という文化は醸成されず、むしろ「(苦手だから)書かなくてよい」という文化が醸成されてしまっている。
そんな中で、黒柴は自社内では割と「書いて残す」ことを実践できていると自負しているが、ではなぜ書いて残すということを身に着けることができたのか?
長く成ったので、次回はそれを述べていきたい。
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