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誰のための仕事なのか

若い頃、先輩に「仕事は誰のためにするのかわかるか」と聞かれたことがあった
私は勢いよく「会社のためです」と答えた
先輩は「違うよ、自分のためだよ」
と教えてくれた

そうなのだ
それならば納得できる
今まで担当したことのない仕事も、知らなかった知識も、嫌な奴と組んでする作業も、全部に説明がつく

「会社のため」って考えると「なんで会社のためにこんな奴と組まなきゃなんねーんだよ」という愚痴が出る

「自分のため」ならば知らない知識も「しゃーない、これ勉強しとかないと昇格できないし」と納得することが出来る

今、私は不動産の鑑定評価という仕事をしている
簡単に言うと土地や建物の「適正価格」を求める仕事である

一つの不動産を多角的に観察し、多くのアプローチにより価格を導き出す
そのために多くの調査を要する

それはそれでいい事である

問題はこれから

多くの項目を設けて調査しているうちに、本当に大事なことが薄まることがある

クライアント様が知りたいこと「うちの不動産てどうなの」「売れるの」「いくらで」「何か問題はあるの」等々、肝心なところが希薄となってしまい、杓子定規な作業、堅苦しい表現、型にはまった文章になってしまう事がある

確かに、鑑定評価書は役所や金融機関、弁護士や税理士等、多くの方々が目にすることもあり、それらの方を意識した調査、検討、論述が必要である

それはそれで良しとして、まずはクライアント様にお答えすることが最重要だと思う
ポイントをわかり易く、優しい言葉で、例示などを活用して「どうなの?」に対して「こうですよ」と

そうだよ、そうに決まってる

サラリーマン時代は「自分のための仕事」だった、今は少しだけ成長して「クライアント様のための仕事」が加わった、

いや、新たに気付いた


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