会社の方針より自分の信条
よく海に一緒に行く中学からの同級生の友人がいます。
私も彼もお互い子育てが終わり、週末特に用事が無ければ共通の趣味であるサーフィンに行きます。
海までの道中、車の中では他人に言えないくらいくだらない話から社会情勢やら仕事の話をします。
彼は事務機器の会社に勤めていて、主に技術的なサポート業務をしているんですが、この頃の会社の方針に疑問を抱いているようなのです。
これまでは技術的な仕事で済んでいたのが、ここ最近は客先で営業もするように言われ、通常の保守点検は評点にならず、売上ばかりが評価対象になってしまったらしいのです。
最近はどの業界でもそんな傾向になっていると思われますが、彼の会社では営業ノルマを達成する為に期末締切日が迫ると不正な売上行為が行われるらしいのです。
不正と言っても法に触れるレベルではない無理矢理?な営業手法です。
例として、保守点検で客先に行って点検の結果まだ使える機械を「もう交換しないといけない」というトークで買わせるみたいな感じです。
友人は、会社のため自分の給料のためとはいえ、好意にしてくれているお客さんにウソをついてまで売りたくないと言うのです。全く同感です。
私も以前、建築の仕事をしていて得意先からの依頼で、通りがかりの業者に「瓦がずれていてすぐ直さないと危険だ」と言われたから点検してほしいという相談が頻繁にありました。
実際に客先へ行って点検すると異常は見受けられず、10件中10件が不安を煽った小遣い稼ぎの営業というパターンでした。
この場合、お客さんは屋根に上ることができないので「瓦が数枚ずれていたからすぐ直しておきました。ただ、このまま放置するとまた別のところがずれる可能性があるので全体的な補修が必要です」みたいな営業トークをすれば仕事になり得ます。
これまでの信用もあるわけだし、全くのウソではないからです。
でも自分の中ではウソをついていることになります。
「そうまでして仕事は取りたくない」それが信条でした。
お得意様なら点検程度であれば出張費をいただくことはありませんでした。でも会社から売上を迫られていたら、そんなお金にならないことに時間を費やさずにとにかく売ってこいとなるでしょう。
お客さんにおおげさに話を盛って高めな見積りをつくって仕事になれば、世間的にウソではないし会社からしても不正にはなりません。
売上ばかりを追いかけていればこういうことになりますよね。
技術を売っていた会社が営業会社になっていくパターンです。
友人にとっても私にとっても、そういう仕事はしたくないというのが一致した意見でした。
そんな売上第一主義が進む友人の会社で、ここ最近「ヤル気向上委員会」なるチームが社内に発足したらしいのです。
そのチームから「どんなことが仕事のヤル気につながるか意見を聞かせて」というメールが来るらしいのですが、友人は「勝手にやってろ」と心の中でつぶやいているそうです。
二人ともそろそろ還暦という年齢に差し掛かっていて、私はそんな会社組織から一足早く離脱しました。
「自分の信条を曲げてまで会社にいなくてもいいのでは」と友人に早期退職を進言してみましたが、30年近く勤めてきていることもあって葛藤しているようです。
モノを作っては壊し成長し続けなければならない現代の社会システムは
しょーもない二人のアラ還オヤジの楽しい海への道中を悩ませるのでした。
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