【詩】your room (There will be Time after Time.)

your room (There will be Time after Time.)

カミーユ・ピサロの油彩みたいな
夕日の映える
高校の音楽室という
まぼろし

紙パックの紅茶とシベリアと
カタンの開拓者たちと
水瀬いのりのささやきの
まぼろし

立ち入り禁止の屋上の
給水塔の影でなかなか
たばこに火をつけられない
まぼろし

テスト勉強なんてしていない
と言うくせに
ほんとうにしていない
まぼろし

まぼろし、光と影と
あなたのことが好き

じっさい、時間はあるさ、いくつかの、
思い出したいことだけを、思い出すための、
さわれない詩と、戻れない過去は、
なにがちがうの？

くらくら、ゆらゆら、

古びたスピーカーから自ずと流れ出す音、みたいな、
言葉も、情景も結ばない、なにも、
時間の淀みのような奔流と、その離れ方。

　“　　　　　　　　　　　　　 　　　  　 ”
　　　　  君は僕のもの　　　　　　　　
　　　 　 どうしたらそう言えるの？　　

油の匂いのマクドナルドで
音楽理論のレッスンをした

あの時話していた
オーロラは見られただろうか
僕はまだ
何か国も旅をしたのに
いまだ、いつかね、意外と簡単に行けたから、遠くまで
戦争は少しだけ身近になって
戦争じゃなくて、ぼうりょく、という言葉を使うようになった

小さな冬は公園の隅に
スマホのゲームから顔を上げず
魔法の杖の形を討論している

そうでしょう？
ずいぶん遠くまで歩いて来られたから
その足跡は黄昏色の心象に溶けて
過去というものはまぼろしに埋没した

笑って、愛おしく
明滅するあなた、としての、まぼろしの後ろ姿たち　　

　

それじゃあ、またね

そう、もう、君は僕のもの
触れたい、まぼろしに埋もれた彼方から
あなたたちの部屋の光が漏れて
扉が少し開いている気がする

引用：クラムボン「君は僕のもの」
（https://youtu.be/w8HRT12GOqc?si=_eCxjsoUKQ69UNlA）

アニメ「けいおん！」によせて

絵：フェルメール ≪天文学者≫

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（けむり）