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Film Out Episode11 -僕たちの残響-

寝不足のまま僕は、会社に着いた。
今日は、彼に会えるのだろうか。
しかし、そんな淡い期待は見事に裏切られた。
彼の秘書から、彼はしばらく会社に来ないと聞かされ、理由は聞いていないという。
何があったのか。
僕は何度もメッセージを送ったが、既読になることはなかった。

それから10日が過ぎた。
相変わらず既読のつかないメッセージ。
それでも僕は、メッセージを送り続けた。
会社からの足取りも重く帰宅した僕は、自分の部屋の明かりがついているのに気が付いた。
慌てて家の中に入ると、そこにはテヒョンがいた。「おかえり」
彼は笑いながら僕を出迎えた。
それを見た僕は、勢いよく彼を抱きしめた。
「痛いよ、ジョングク」
彼の訴えに僕は彼を離したが、その勢いのまま彼の口唇に口づけた。
そして深くなるキス。
久しぶりのその感触を味わうように、僕はキスをやめようとしなかった。

しばらくして、僕が唇を離すと彼は言った。
「連絡できなくてごめん」
「うん。心配した」
「逢いたかった。すごくジョングクに逢いたかった」
「うん。僕も逢いたかった」
僕のその言葉が合図のように、再び口唇を重ね合う。

そして、僕はそのまま彼を押し倒し、硬くなった彼の下半身を口に含む。
久しぶりに味わう彼の味を僕は堪能した。
「そんなに激しくしたら、すぐに、ああ!」
そう言いながらすぐに頂点に達した彼の口を僕の口で塞ぐ。
そして、すぐに唇を離して彼に言った。
「ごめん、壁薄いから」
苦笑いした僕に、彼はごめんと言って、僕に短い音を立ててキスをした。
すると、くるりと上下が逆転し、今度は僕が彼を下から見る形になった。
ニヤリと笑った彼の顔は、すぐさま僕の下半身へと移動した。
彼の生温かく柔らかい感触に、僕はめまいを覚え、あっという間に頂点に達してしまった。
僕は、恥ずかしくて思わず腕で顔を隠した。
そんな僕を見て彼は、僕の腕を掴み顔から引きはがした。
「かわいい」
そう言った彼は、僕の額に自分の額を摺り寄せた。かわいいのはどっちだ。
そう思った僕は、再びくるりと上下を反転させ、上から彼を見下ろした。
そして、すぐに指を彼の中へと滑らせる。
「んん」
彼の眉間にしわが寄る。
「痛い?」
「大丈夫」
僕の問いかけに彼は吐息混じりに答えた。
それから少しづつ彼の息が荒くなり、彼の中へと続く入り口が一段と緩くなる。
それを確認した僕は、自分を彼の中へと滑り込ませた。
すると彼は、一段と眉間にしわを寄せ、吐息と共に下唇を噛んだ。
「大丈夫?」
僕が聞くと、彼は小さくうなずいた。
僕は、それを合図に彼の奥へと突き動かす。
久しぶりの彼の感触と彼の妖艶な姿に、僕はもっと見たいとさらに激しく強く突き動かした。
「もう、無理…」
そう言った彼から、熱く甘い吐息と白い奔流がほとばしった。

それからしばらくして、僕はベッドの上で彼を後ろから抱きしめていた。
沈黙が続く。
その沈黙を破るように彼は言った。
「しばらくここにいる。会社にも行かない」
「何があったんですか?」
そう僕が聞いた後、また沈黙が訪れた。
僕は、彼が話してくれるのを待った。
すると、彼は意を決したように、僕の方を向いて何があったかを話し始めた。
彼の話だと、取引先の令嬢と結婚させられそうなや、それが原因で兄と喧嘩しスマホが壊れたこと、監視が付いたことなど。
「まるで囚人のようだった」
そう言って涙目の彼を、僕はそっと抱きしめた。
「ずっとここにいていいですよ。でも仕事はどうするの?」
「会社に行けば、ヒョンと顔を合わせることになる。それは嫌だ」
彼はそう言って、僕の体をきつく抱きしめた。
「わかった。これからどうすればいいのか一緒に考えましょう」
「ごめん、迷惑かけて」
僕の言葉に彼はそう言って、僕の胸に顔をうずめた。
「迷惑なんかじゃないよ」
僕はそう言って彼の頭をなで、やがて僕たちは眠りに落ちた。

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