どんぐり兄弟
松竹芸能所属、M-1グランプリ2015年準決勝進出、実の兄弟漫才師どんぐり兄弟。
弟のあきらさんは落ち着いた声とテンションで兄のボケに振り回されながらも淡々としたツッコミが持ち味。
兄のさとるさんはIQ146でMENSA会員、見た目も長髪で言動も支離滅裂、インパクトのあるキャラクターが魅力です。
一定のテンポで言葉遊び的なボケを重ねてゆき、そのペースのままどんどん話が展開して破綻しゆく羅列漫才。一度見たら癖になる面白さだと思います。
漫才でのあきらさんは冷静かつ的確かつ、抑揚や緩急のあるツッコミを見せて翻弄されながらも主導権を握ってる印象ですが、
コンビでフリートークをしている場面を確認してみると、割と大人しめというか、弟として兄について行ってる雰囲気があって、
それを踏まえて漫才を見ると
さとるさんがまず前線に立って喋ってる状態に、こぼれ球を落とさないようにツッコミを入れつつ、そのわずかな隙間に自分の間合いやイントネーション、語尾を落として擽る感じを入れ込んでいる形なのかなと思えてきます。
ナイツの土屋さんがもっと低音を使いこなし、かつメロディラインの幅を持たせたような感じ。
対して、ボケのさとるさんは
漫才でもフリートークでも基本的には大きく変わらずに、ちょっと駆け足気味のあくせくした口調で、理路整然と語っているようで話が連想ゲームのようにあっちこっちへ飛んで脱線しながらも延々とそこに言葉を重ね続けてゆく
頭の良い人の話し方の特徴を凝縮したスタイルそして、そこの下地になんかよく分からないおかしみがずっと敷かれてるような喋り方をしています。
分裂的なエピソードを矢継ぎ早に展開させてて、聞き手はそれに着いていきながら自分の脳内で話の連結を編集して受け取ってゆくので、聞いてるうちにテトリスみたいな常に情報処理をし続けハマっていってしまう瞬間があります。
見た目の雰囲気も相待って、ある種のマインドコントロール的な効果が生まれてて、それをナチュラルに体得してしまってるのかもしれません。
この2人が組み合わさって、
羅列のみで異様なグルーヴと没入感を持った
どんぐり兄弟の漫才が出来上がっているのだと思います。
漫才のコードをあきらさんが維持したまま、さとるさんのずっと聞き続けると一定のリズムでしか考えられなくなるような引き込み話法がベースに耕されてゆく、
喫茶店の隣の席から聞こえてくる何かの勧誘のようなトークの中に、心地よい相槌を打つ形でツッコミが入ってきて笑わされて、中々席を離れられなくなっちゃってる
そんなニュアンスがどんぐり兄弟の漫才にはある気がします。
こういう羅列的なスタイルって前述したナイツのように、羅列する側のボケが中心になる事が多いと思うのですが、どんぐり兄弟はツッコミのあきらさんが漫才のコードとして喋りのイニシアチブを一応取ってるバランスだと感じるので、それによる余白部分でのちょっとした言い方芸の自由演技に幅が生まれてる状態だと思います。
なので、むしろ
コント師のラバーガールとかに近いと思います。