シティボーイズ
シティボーイズは大竹さんを中心に置いてツッコミの役割として両サイドのふたりで立てているフォーメーションなのですが、この時きたろうさんだけその輪から分離している感じです。きたろうさんが小ボケとして「裏回し」をしているのがシティボーイズのトリオ芸の特徴だと思います。
きたろうさんはあの飄々とした雰囲気とまったりとした語り口で誤魔化されていますが、気質としてはかなりツッコミ的だと思います。会話の中でのスカし方やくすぐり方を心得ていてそれを要所要所で差し込むようにして場がギリギリ中だるみしないようにコントロールしています。大竹さんはそれを拾っていきながら少しきたろうさんに振り回されるようなていを取りつつ話を常に綱渡り的に繋げていきます。大竹さんはツッコミというより対象に対しての距離感を測りながらそのコミュニケーションの中での自分のキャラクターを含めたある種の定型的な台詞をなぞってゆくトレース能力みたいなものが高いと感じます。なのでどこか勢いまかせというかその反射神経を先行させたフォームをしています。
そして斉木しげるさんがその反対側から大竹さんが繋げている言葉をさらに繊細な紡ぎ方で自分のターンになった時に存在ごとボケになるような立ち振る舞いを施します。神妙な含みを持っている独特の重たさがあるけどどこかおかしみが溢れてくる口調でそれを作り上げてゆきます。この斉木さんのパートがシティボーイズがシュールと言われるようなコントの世界観を一番構築している要素なのですが、大竹さんはここに関しては自身が振り回されるのではなく斉木さんの雰囲気を「いじる」ような形でイニシアチブを取りながら振る舞っていくのです。そして掛け合い的にはここが一番コント的だと思います。実際斉木さんのボケ方の演技は大竹さんに対しての息継ぎのような「アシスト」性であり大竹さんの「いじり」を成立させるためにそこに向かって放たれています。ここのやり取りが中だるみをするかしないかの所でまたきたろうさんがタイミングを見計らって差し込んでゆきます。
この循環を繰り返すようなチームプレーによってシティボーイズのあのシュールでナンセンスな空気が出来上がっていると感じます。きたろうさんと大竹さんがトーク的な要素が強く、大竹さんと斉木さんでコント的な要素が強く、そして全体としてはややコント寄りに傾倒しているという感じです。ボケツッコミの役割をストレートに配置して表現するなら大竹さんと斉木さんのやり取りにきたろうさんが外側からツッコんでいる状態だと思うのですが、それをそれぞれ捻ってこのバランスで仕上げているところがシティボーイズの受け手を掴ませない不可思議な空気感の正体だと思います。