パーパー
パーパーのほしのディスコさんは高音で特徴的な声と絞り出す様な喋り方をしています。この一度耳に入れたら中々出てこない様な声質を駆使してそれを如何に印象付けるかで笑いを誘うという形です。
ネタや1人喋り、相方を含めた芸人間でのトークだとほしのさんはどこかその声の引っ掛かりでくすぐり続ける様な喋り方をしていると感じるのですが、この動画の様な落ち着いた雰囲気の中ゆっくり長尺で話すとそこまで気になりません。聞き手が慣れてしまうという現象もあると思いますが、例えば同じような高音で特徴的な声を使いこなす安田大サーカスのクロちゃんさんや芹那さんと比べるとほしのさんはそこにトーンやモーラというものの種類が割と多いと感じます。
こういった甲高い声はある種のイラつきと共に受け手にインパクトを残して印象付けるのだと思うのですが、ほしのさんはそこに至る手前辺りの子供や小動物の様な聞き手の警戒心を下げさせる効果に留めているような感じです。ついいじりたくなってしまう。そういった気持ちを誘発させる意識があると思います。
また相方のあいなぷぅさんもその影に隠れて意外と特徴的で耳に残る声と喋り方をしていると思います。こちらは女性特有の高音ではもちろんあるのですが何というか少しだけ籠っています。鼻が詰まっているかのような言葉の発し方で常に声が上擦り気味裏返り気味です。それによって引き起こる幼児性みたいなものを残したままマイペースに話します。
あいなぷぅさんはそれを警戒心を下げさせる領域のギリ手前のキャラクターを印象付ける事の方に専念している領域に落とし込んでいると感じます。アイドル声というかアニメ声のようなゾーン(ただ本格的にそこに到達している訳でなくそれを極めて原始的にリアリティを持って追求したというような仕上がりです。これをもっと洗練させるとマヂカルラブリーの村上さんの様な声色の使い方になると思います)そこに自ら身を置く事でその範囲に置いては主導権を若干握っているという状態を常に整えています。端的に言えば天然女性タレントのイニシアチブの取り方です。つまりほしのさんと逆です。
この隣接する領域の境界線を挟んだ位置取りをしている事にパーパーのコントラストがあると思います。あいなぷぅさんの設定した印象のラインを、ほしのさんが一段上げるような声でのリアクションによって圏外に突入させるのです。その瞬間になんとも言えない感情の揺さぶりが発生します。これをネタやトークなどではほしのさんが「かわいそう」に見えるようにセッティングする事で笑いに繋げているという構造です。ほしのさんの声質は扱いによっては「かわいい」に直結するのでそう見えないように顔芸や間合いや言葉選びを調整しているのが感じ取れます。
フォーメーションという点に置いてはTHE GEESEやダーリンハニーに近いと思います。あいなぷぅさんが耕したフィールドでほしのさんがツッコミというコメントによって繋いでいくという具合です。そこに声での惹き付けとそれによるターンの長さ、あとあいなぷぅさんの可動域の広さなどがパーパーの特異点だと思います。