藤村 俊二
俳優、声優、振付師、実業家、
様々な側面を持ちながら、それら全てを飄々と淡々とした雰囲気でこなしてしまう印象を持つ
おヒョイさんこと藤村俊二さん。
8時だよ全員集合でのOPの振付や、
ゲバゲバ90分やカリキュラマシーンでのコメディアクター、
映画「DEATH NOTE」ワタリや、アニメ「黒執事」タナカの声などの老執事役
などなど
どのジャンルでも、
あの控えめさと渋さと茶目っ気さが混ざった絶妙なバランスのおかしみを醸し出し続けてくれます。
藤村さんのあの独特の魅力を演技からではなく、あえて喋りから紐解こうと思うと、
声そのもの自体はかなりダンディズムから遠めで、むしろ力の抜けるようなか細く弱々しくとぼけた与太感強めな声質、なんだったら若い頃の喋りとか聞くと割と早口で忙しない印象だったりするのですが、
トークバラエティなどに出た時に、そのなんとも言えないフラを下地にして、話を振られてから喋るまでがけっこう早めだと思います。
大人の落ち着いたトーンのイメージで間をゆったり使った喋りかと思いきや、返しの速度は実は遅くなくて、ただ一言のサイズにまとめると言うよりは、その振られた範囲内でやや長めに聞かせる話をしている事が多いと思います。
これは世代的、年代的なコミュニケーション定型もあると思いますが、会話ペースにある程度の支配性がある話し方だと感じます。ロンドンブーツ1号2号田村淳さんのコメンテーター話法とかと似てる感触。
簡単に言うと引き込み系の話術スタイルだと思うのですが、
藤村さんの場合は上記した田村淳さんのような会話の主導権を分かりやすく獲得してゆくようなフォームをしていなくて、
と言うかその気配を消そうとしながら、
でも自分の番になった時に緩やかにテンポやリズムの手綱を握っていく傾向があるのだと感じています。演技に関してもそれをベースに構築してる手法。
こういったこの年代の似たような男性タレントと見比べてみても、
例えばタモリさんとかの方が実はもっと余白があって空間掌握だとしても全体での進行というような運び方をしてて、
例えば高田純次さんとかだと常に演じきる隙のなさはありつつもそれは受け身によって発動するテクニックなので支配性という感じではあまりない気がします。
藤村さんは支配してないようで、実はその瞬間の空気の誘導による部分的な支配をしてる。それがすごく上手いんだと思います。
なので、集団の中だと特異的なポジションで全体のエアポケットとして風穴を開けるような機能を有するのではないでしょうか。SMAPの稲垣吾郎さん的な立ち位置。
この支配していないようで実は支配しているという運動の震源地を探してみるに、藤村さんの歴史の中で振付師、パントマイマーという経歴がけっこう重要な部分なんじゃないかなと感じています。
藤村さんの尻尾を掴ませないトーク術や、それを軸にしたような演技体型は、どこか「空洞化された構造物」っぽさを覚えます。つまり"ガワ"。外側のみの表現出力が洗練されてる。というかガワのみで惹きつけて魅せている感じ。
あらゆる芸術はどう見せるかが命題であるのはもちろんですが、そこに対して俯瞰的批評を入れ込む空間が無いほどの洗練が、結果として中心の無に価値を生んでいるようにも思えます。
藤村さんはインタビューで執事という仕事について聞かれた時に「全部を知っていながら、余計なことを言わない。」と答えています。
振る舞いの研ぎ澄ましによって、その時その場を鮮やかにコントロールする手捌きはいつ見ても惚れ惚れします。
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