リーガル・クラムチャウダー珍道中
サンフランシスコに立ち寄ったが、フィッシャーマンズワーフには行かなかった。
こんことは、僕にとって初めてかもしれない。あそこの角にある小さな店のクラムチャウダーが大好きだった。サワーブレッドボウルのやつ。前回訪れた時に、コロナ禍の影響か店は閉まってて、おまけにドリキンによればあの辺りの危険度は恐ろしく高まっているとのことで、わざわざそっちの方に行くモチベーションが湧かなかった。
空港周辺よりやや南に降りるとサンマテオ、パロアルト、クパチーノ、マウンテンビュー、そしてサンノゼがある。いわゆるシリコンバレーになる。
マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館で待ち合わせて、現地のAI半導体のアーキテクトと夕食にペルー料理を食べた。
ペルー料理、初めて食べたけどなかなか美味い。南米の料理は美味しいんだけど、危険度を考えたら「ちょっと料理が美味しそうだから」気軽に立ち寄れる場所でないのが残念だ。
ワインはマルベック。やはりアメリカに来たらマルベックを飲まないと。
マルベック種のワインは主に南米で作られるのだが、基本的に美味すぎるのであまり輸出されず、日本には滅多に入ってこないとは、元マイアミ駐在員から聞いた情報。確かにマルベック、美味い。
日本酒も、個人的には新潟で一番うまい日本酒は栃尾の壱穣だと思っているのだが東京に入ってこない(Amazonで買えるやつはあるにはある)。それと同じでワインも原産地から離れれば離れるほど安くて美味しいものを入手するのは難しくなる。フランスのスーパーで売ってる3ユーロくらいのワインが、日本では6000円くらいになってしまう。そりゃ日本人からしたらワインは高いと思われても仕方ない。
それから東へ東へと向かい、シカゴで寿司を食う。
サンフランシスコで寿司を食い忘れたための措置だったが、内陸部で寿司を食うという愚行に相応しい罰を受けることになる。でも寿司そのものは悪くない。ワサビがやばい。
ノースカロライナに立ち寄り、友人と会おうとするがあいにく先方が風邪でダウン。先は長いので風邪をうつされたらゲームオーバー。したがって会食は断念し、彼に勧められたBBQレストランに一人で行く。
美味いのはもちろんだが一番びっくりしたのは、安かったこと。プルドポークサンドイッチと水で9ドル。
やはり「美味いものは安い(現地では)」という法則が成り立つ。
アメリカのBBQの発祥の地はノースカロライナと言われているのでBBQファンとして一度は来てみたかった。
経費と時間の節約のため、一箇所で一泊したらすぐ次の場所に向かうスケジュールになっていて慌ただしい。しかも、下手すると空港で延々待たされる。
今回学んだのは、とにかくニューアーク空港には行かないこと。今回はニューアークで8時間くらい遅延した。ニューアークは全米で一番遅延が多いらしい。もちろんコロナでスタッフが大幅に削減されたのも原因の一つだという。
ボストンからニューアークに行くフライトが50分遅れ。しかしニューアークからボストンに行く5時に出るはずの飛行機に乗れるようになったのが日付の変わった0時30分。その間、カウチで気を失ったように寝た。肩こりがやばい。これでは予定を立てようにも立てられない。
ボストンのホテルに着いたのは深夜二時。それから寝る。朝食は七時。五時間もしないで目が覚めてしまう。
MITに立ち寄った後、どうしても確かめておきたかった。正統な魚介料理を。
その名も「Legal Sea Foods」というお店で。ここはボストンのあちこちにある魚介料理屋だ。ここの名物はクラムチャウダーとロブスター。
その日、MITのキャンパスの向かい側にあるLegal Sea Foodsケンブリッジ店は空いていて、独り者でも気楽に注文できた。
何年ぶりだろうか。少なくとも前回来たのはコロナ前だから、3、4年ぶりということになる。
一口、スープを口に運ぶと、塩気たっぷりのアサリの身がドカーンと口に入ってくる。このどっさり感は他にはなかなかない。たまに気が向くと自分で作ったりするが、クラムチャウダーを美味しく作ろうとするとものすごく手間がかかる。それに偽物を作るにも、本物を定期的に確認しておかなければならない。
うーん、これぞクラムチャウダー。正統なクラムチャウダーだ。
ちなみに最近知ったのだが、東海岸のクラムチャウダーにも、ボストン流とマンハッタン流があるらしい。
マンハッタン流はトマトを使うようだ。それはそれで美味そう。
クラムチャウダーの何が美味しいのか、日本にいるときは全く分からなかった。僕にとってスープというのは、ファミレスのドリンクバーとかサラダバーのおまけについてくるもの、という認識だったから、コーンポタージュスープの方が好きだったくらいだ。ちなみにコーンポタージュもたまに自分で作る。
でも、アメリカに来るとなぜかクラムチャウダーが美味いことに気づく。
なぜかっていうか、材料費考えたらまずいのにわざわざ作るわけがない。
クラムチャウダーが美味しいと感じられるようになった時、大人の階段を登ったような気がしたものだ。
そしてカナダに到着すると、まだシートベルト着用サインが消えないうちに次の便の搭乗が始まっているというSMSが来る。嘘だろ。
とにかく全速力で走り、イミグレを突破。
大陸間横断飛行は一日に何便もあるわけじゃないので乗り遅れたら延泊必至。それだけは避けたいと空港の端から端まで走る勢いでスーツケースを走らせた。しんどい。これは歳を取ったらもう無理だろうな。思えばこんなシーン、昔は普通だった。30代の頃は元気一杯に空港を走っていたが(これもそもそもおかしいだろと思うが)、40代後半となると体力の限界も感じなくはない。
ハブ空港に大学なり会社があるって大事だなと思った。
東京・大阪は恵まれてるよ。夜のタクシーだって安心して乗れるし。
というわけで珍道中はまだまだ続く。