これがリアル・マイクラ!?一日限定2組しか見れない金山の真の姿を探訪する
朝目覚めると、佐渡にいた。
少し散歩してから朝食会場に行く。
朝食は、なんとお重の形で供された。
お重を開けると、見たこともない食べ物が。
これが味の宝石箱ってやつか!
「美味しい」
「これ何?すごく美味しんだけど」
そんな声があちこちから聞こえる。これは割と新潟旅行あるあるなんだけど、大半の旅行者は朝食が美味しいことに驚く。なぜかというと朝食といえば和食、和食といえば米だからだ。そして米が美味いということは、美味いコメに合わせた美味い食材を必然的に持ってくる必要があるのだ。
とはいえ僕も初めて食べるものが多く、そのどれもが丁寧で美味しいことに感動した。特に、画面中央のお刺身の手前の白いやつは、歯応えがあって美味しいんだけど、どんな魚なのか見当もつかなかった。
スタッフさんに聞いてみると、「タコの頭です」という答えが返ってきた。衝撃的。タコの頭は食べたことがあったがこんなに美味しかった記憶はない。
ナスの煮浸しも、卵焼きも全部食べたことのない美味しさ。すごい。あの地獄のような船酔いを我慢して佐渡まで来てよかった。
二日目は世界遺産となった佐渡金山へと向かう。
金山へ向かう前に、あと一歩のところで世界遺産になり損ねた北沢浮遊選鉱場へ向かう。なぜなり損ねたのかというと、少しだけ新すぎたらしい。
北沢浮遊選鉱場は金山の麓にある巨大な設備の遺構だ。
そこまで古くはないはずなのだが、巨大な設備に苔が生えてまるでラピュタ。
ここは何をしていたところというと、江戸時代、金山が発見され、幕府はその翌年に佐渡を直轄地として奉行所を置いた。ここでは採掘した金を含む鉱石を選別し、上から下に少しずつ捨てていく。一番下に来る頃にはほとんど粉々になっていて、粉々になった余った鉱石を水が旋回するプールに入れて遠心力によって分離し、重い金は下に沈み、軽いゴミは上に浮いてくる。故に浮遊選鉱場と呼ばれていたということだ。
しかし、ここの操業が止まると、地元の人からは単に便利で広い場所としか認識されず、ゴルフの打ちっぱなしとか、子供のプールとして使っていたらしい。なんという能天気さ。
世界遺産になるかもしれなかった遺跡のプールで泳いだ子供達はどんな大人になるんだろう。
世界遺産になるとかならないとかの話でここが意外と重要な場所だったことがわかり、今はもちろんプールとしてもゴルフの打ちっぱなしとしても使われていない。
さあ、そしてついに佐渡といえば、金山である。
最近、いろんな人が佐渡づいてるのは世界遺産に認定されたことが大きいのだと思う。個人的には世界をさすらう中で様々な世界遺産を見てきた。
世界遺産というのは、いわば観光におけるミシュランガイドみたいなもので、ミシュランガイドと違うのは毎年星が入れ替わるわけではないということ。つまり、「旅の目的地になりうる場所」が世界遺産なのだ。知らない外国に行っても「世界遺産が近くにあるから寄ってみようかな」と思うでしょう?吾輩も世界中で「あそこに世界遺産があるからちょっと行って来なよ」と言われて見にいくことがある。
世界遺産の多くは、古い街並みや建物で、まあそんなに気合を入れて見なくも「ふーんなるほど」と気楽に見れるものが多い。
・・・のだが、そこは落合陽一大先生。世界遺産を「ふーんなるほど」と見せてはいお終い、というわけがないのだった。
渡されたチケットがこれ。
通常は入ることができない立入禁止区域を、観光ガイドではなく鉱山探索の専門家が案内する、ガチのマインクラフト修行だ。
あまりにも危険なので事前に色々と注意事項を聞く。
事前に足のサイズを聞かれていたので、まずは長靴に履き替える。
さらに、ヘルメット、軍手、雨ガッパ、ヘッドライトを装備する。
基本的に生命の危険が迫った時の自分の精神状態に自信を持てないビビりである吾輩は、この時点でかなり緊張している。
見学中に山が崩落したらどうしよう。閉じ込められたら?え、まさか野生動物に襲われたら?武器も持たずに洞窟の中に入っていいのか?
洞窟といえば何年か前にタイの洞窟がやはり観光案内中に大雨で入り口が塞がれてしまい、脱出不能になった事件がある。この時はダイバーによって救助されたが、そんなことになるのではないかという不安も湧いてくる。あと空気。洞窟の中は空気が薄い。もしも洞窟の中にいるときに地震が来たら?とか考えるとキリがない。
洞窟の中では動画を撮りながら歩くのはやめてくださいと事前に注意される。
なぜなら、洞窟の中はぬかるんでおり、粘土質の部分に足がはまって抜けなくなったりすることがよくある。その時にカメラで片手が塞がっていると体を支えることができず怪我をしたりするかもしれない。
なので基本的に立ち止まって撮影することに。
注意事項を確認して、いざ洞窟。
それはとんでもなく洞窟だった。正確には坑道だけど。
基本的に江戸時代に金山が発見された時、洞窟は手で掘られていた。
明治に入って近代化されると、機械で掘るようになった。
機会が掘ると雑なので壁全体がゴツゴツしているが、人間が掘る時には雑にやると自分が怪我をするので滑らかになっている。
この坑道は当初400メートル先まで掘り進む必要があったが、佐渡の金山はめちゃくちゃ硬いので一日よくて数十センチから1メートルしか進めず、結局掘り始めてから金鉱に辿り着くまでに14年掛かったという。
ゲームのマインクラフトは一日どころか数秒でガンガン進めてしまうが、現実の坑道はそんな簡単にはいかないのである。
金山には赤い原石が取れる場所が多く、これを焼きしめると無名異焼きという焼き物になる。これが高温に強く尚且つ硬いので、江戸時代は照明器具や吹子の口として使われたらしい。
佐渡金山はとにかく硬いため、普通の坑道には崩落を防ぐための棒とかがあるんだけど、それがない。それがなくてもこんなに薄い壁でも支えられる。
という話なんだがとにかく怖い。崩落を防いでくれ。
当たり前だけど洞窟は手掘りされているところは狭くて観光向きではない。機械堀りされたのはトロッコを通すための道。手掘りの道とトロッコの道が並行に掘られていて、これでうまく空気を循環させて坑道の奥でも酸欠で死なないようになっている。
ちなみに坑道はやや上り坂になっていて、重い二酸化炭素を下に、酸素を上に送り込む構造になっている。
そしてついに鉱脈に到着・・・といっても400メートルもいくのは大変なので近場の別の鉱脈に辿り着く。
金の鉱脈、つまり金脈やで!!
金脈だというのに黒い。
実は金鉱というのは銀と金が混ざったりしているらしくて黒く見えるらしい。白い石英(ガラスなどに使う)の中に少しだけ黒い線があるやつが金鉱らしい。
すげえ、盗まれないのか?と思うが、実はこの辺の打ち捨てられた金鉱石には金はほとんど含まれていない。マイクラと違って、一つの鉱石から得られる金の量は大きなばらつきがあるらしい。
このレベルの捨てられた金鉱石から1グラムの金を抽出するには1トンくらい盗む必要がある。多分そんなことする人は誰も居ないので放って置かれて居るというワケ。
なかなか難しいところだ。
トロッコも木製だったので朽ち果てていた。
普段滅多に見れない、というか島民も滅多に見れない超レアな金山体験だった。
金山やべえなあ。
さて、金山を後にした一行はフレンチ・レストランで昼食をとることに。
え、またフレンチ?
実は佐渡、フレンチやイタリアンが非常に多いのだ。それだけでなく、海外からの観光客も増えているため、海外から佐渡に移住してきてフレンチのビストロを開いた人までいる。
このレストラン「ラ・パゴット」は、単なるレストランというだけでなく、鶏や烏骨鶏、アヒルなどを放し飼いしていて、彼らが産んだ新鮮な卵を使った料理や、本格的な釜を使った料理などが売り。
「朝、漁師がやってきて新鮮な魚を直接仕入れられたり、庭で育てた新鮮な卵を使ったり、料理人にとってこれほど理想的な環境は世界中探してもない」という。
放し飼いされた鶏たちは適当に散歩に出かけるが、夕方になるとまた家に戻ってくるという。どういうことだよ。
このお店ではワインとフォアグラ以外は佐渡でとれた新鮮な食材のみを使って料理が作られている。こんなところもあるんだ。
さて、次はどこにいくのかな、と思ったら・・・
まさかの清水寺
かと思ったら、清水寺と書いて清水寺と読むらしい。元々、天皇やら貴族やらが流刑されてきた場所なので京都っぽいものがあちこちにある。五重塔もあれば清水の大舞台もあるのだ。
かなり異世界感のある参道を登ってくと、何か妙な看板が。
そういややたらさっきからブンブンうるさい虫が飛んでる。
アブかな、ヤブ蚊かな。刺されたら嫌だなーと思っていると。
蜂やんけ。
怖いわ。蜂の巣がある参道。
ただ、それほど大きな蜂の巣ではなかったのでそっとスルーすれば良いのだが、どうも佐渡は蜂の巣は駆除しないというしきたりがあるみたいで、業者を呼んで駆除を頼んでも、「スズメバチは同じ場所に翌年は巣を作らないんで、そのままそっとしておきませんか」と勧められるらしい。業者、商売っ気なさすぎだろ。
そして山道を登り切ると・・・
ここは映画撮影などにも時々使われるらしい。
ここの住職はすでに住んでいないが、檀家があるので取り潰すわけにもいかないのだという。
最近修復されたという大舞台は、なんかちょっとイベントをやってみたいなーと思わせるインスピレーションに溢れていた。
さて、清水の舞台を訪れたあとは、なんと地元のりんご農家でりんご狩り。
まさか理外のりんご狩り。
このツアー、そもそも直前まで日程がよくわからないので、りんご狩りをするような覚悟で来ていない。三日分の下着を持ってきただけだ。それはスーパーコンシューマーいしたにさんの監修したひらくPCリュックで十分なのだが、りんごが入ってくるとなると話がちがう。
まあでもりんごを取るのは結構楽しかった。
こちらのりんご農園も5年前に移住してきた方の運営。
佐渡は本当にそういう人が多いなあと感じた。長岡にはそういう人はあまりいない。
さあそしてホテルに戻って夕飯。
この夕飯が、また衝撃なのだ。
前菜のボリュームが凄い。
そして刺身!
さらに鍋
このどれもが本当に超一流の美味しさ。そしてここでコシヒカリが登場。そりゃ美味いよ。反則だよ。米が美味けりゃ和食は全部美味い。
「はあ、これはなかなかのボリュームだな」と一息つこうとしたら・・・
カニの剥き身を甲羅に詰めたもの。これ駅弁大会だったら単体で5000円くらいするやつじゃんよ。なんでおかず感覚で出てくるのよ。
もちろん美味い。旨くないわけがない。
いやー、豪華豪華。豪華な夕食だったわい、と思ったらまさかの・・・
流石に頭おかしい。ノドグロのお頭を全員に、しかも見たことないくらいでかいノドグロ。本土で食べるノドグロは、新潟だろうが金沢だろうがもっとずっと小ぶりなはずだ。それがなんだよこのサイズ。しかもこれが一人一つずつ全員分ある(大事なことだから二回言った)。
「佐渡はん、浦島観光はん、もうええでしょう」
脳内でピエール瀧が叫ぶ。
しかしそこで脳内トヨエツが
「それでは、最もフィジカルで、最もプリミティブで、最もフェティッシュなやり方で、いかせていただきます」
と語ったか語ってないか。
最後にお吸い物が来た。
お吸い物ね。いや、ちょっとさっぱりしてから仕上げたいもんねー。
やりすぎ。やりすぎだって佐渡はん。
どういう教育受けたらこんなにたくさん料理だそうって思うのか。
しかも美味いから食べれちゃうんだよな。
このあとさらにデザートもある。
が、我々はこのあとこそ本番に行かなければならない。そう、落合陽一と日本フィルハーモニーのサテライト公演イベント。夕飯に割ける時間は一時間しかないのだ。
満腹の上にさらに満腹を重ねていざアミューズメント佐渡という施設へ。
1300人収容する佐渡で一番大きなコンサートホールがほぼ満席。
しかも、市長が小学生とその親を無料で招待したので会場は子供でいっぱい。佐渡島は全体で5万人程度の人口なので、人口の約2%が集結したことになる。また、そのうち小学生の10〜20%がやってきたという。落合ミームがここで大量に放出されることに。
佐渡市長たっての願いで、本来はカルテット構成くらいで行う予定だったサテライト公演が25人のオーケストラ編成に。東京から楽器と奏者を25人連れてくるってめちゃくちゃ大変なことですよ。
そしてプログラムを見た時、我々は固まった。
「東京公演と全然違う」
だが実際にプログラムが始まった時、さらに我々は度肝を抜かれた。
「新作、全部新作カットじゃん!!どうなってんの?いつ作ったの?っつーか一番奥に座ってるの落合陽一じゃん」
一体何が起きたのか?