スクリーンショット_2020-01-31_8

enchantMOONの遺産

正月が終わって、いろんな人に会って、なんだか最近、やたらとMOONの話しをされる。

僕にとってはもう8年も前のことだ。社外の人にとっても、もう7年も前のことだ。
とっくに終わった話なのだ。

にもかかわらず、どうしてまたこれの話しをされるのだろうか。

enchantMOONのその後の話しをすることを僕は意図的に避けてきた。それはあまりにもいろいろな事情が絡み合うからだ。

未だに言える話と言えない話があるが、いずれにせよそろそろ時効かも知れない。もはやこの話をしたところで誰も怒らないかも知れない。

なによりも応援してきてくれた人たちにとっては、どうしてそれがこうなったのか知りたいことだろう。

僕にとって、enchantMOONは過去最大のプロジェクトだった。それ以上でも以下でもない。実際には今取り組んでいるプロジェクトの方が射程が広い。

人生はそれほど長くない。もしくは十分長い。

そのなかで、100万人を相手にするか、100億人を相手にするか真剣に考えた結果、最初に100億人を相手にしたほうがなにかと都合が良いと考えた。

日常的にノートを使う人達というのは、実はかなり少数派だ。ユースケースは限られる。なによりも、自分の思考を制約される。したがって、タブレット型の端末というのは、どうしても100万人を相手にした商売になる。ただ一つだけ例外があるとすれば、先に100億人を相手にして商売を成立させ、そのあとに100万人向けの商品を売ることだ。要は、音楽プレイヤーを売って、携帯電話を売って、そのあとにタブレットを売るという方法だ。これなら100万人が1000万人になる可能性はあるし実際にそうなっている。

勇気と無謀は違う。

手元にあるわずかなお金で最初から100万人にしかリーチしない製品を作っても、そこまで辿り着かずに終わってしまうだろう。

われわれは、いつでも、やろうと思えばなんでもできる。

大企業ができないことができ、大企業ができることもできる。
ハードを作ることもできるし、ソフトを作ることもできる。どちらを先にやるべきかという話でしかない。ソフトを作ったあとで、ハードが気に入らなければ、いつでも作ることができる。今度はハード開発には失敗しない。ハード開発が得意な会社とこれ以上ないくらい強固な関係を結んでいるからだ。あとはタイミングの問題でしかない。

大企業であっても、新規事業の予算が最初から1億円あるということはあり得ない。

ベンチャーであっても、よほどの人々を説得しなければ、完全な新規事業に億単位のお金を突っ込むことはできない。そして失敗するときは何百億円突っ込んでも失敗する。

僕の決断はいつもシンプルで、実際のところそれ以外なにもしていない。

あんまりきな臭い話は、公開の場では書けないから、来月から始めようと思っているnoteのサークル機能の中で話そうと思うけれども、ひとつだけたしかなことがある。

enchantMOONが生んだ最大の遺産は、人だ。

ユーザーとのつながり、作り手とのつながり、そのほか様々な人とのつながりがあって、現在地がある。

お金よりも大事なのは時間だ。時間だけは買うことができない。

したがって、いまあるお金をどこに投入するべきかは時間から逆算して求めることになる。そして、時間にせよお金にせよ、使うべきときは必勝の確信があって初めて行使すべきものだ。

僕らは年内にB2C向けのAIサービスを立ち上げる。最初からうまくいくとは思わないが、5年以内にはかなりの精度でうまくいくはずである。それは文字通り前人未到のものになるだろう。なんせまだ地球上には、70億人しか人がいないのだ。30億人ばかり足りないが、それは人口が入れ替わっていくことによって達成されるだろう。何世代にも渡って続く未来の人類のあるべき姿を、このプロジェクトで模索していこうと思っている。

そのための器が、ギリア株式会社だ。enchantMOONが生んだ最後にして最大の遺産であり、次なる戦いへと向かう我が乗艦である。B2B事業で蓄積した知見をもとに、B2Cへ展開する。これは業務用カメラをまず作り、民生用カメラで覇権をとった製造業の常套手段だ。我々はAIにおいて、同じことをする。