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徒然なる妄想
進化計算のプログラマーは、進化論についてそこまで深く理解しているわけではない。
進化計算の世界では、突然変異率を不自然なほど高くしなければならないことがわかっている。
この理由は、そもそも計算量の問題から、自然界に比べて個体数が少ないため、本当に10億分の1の突然変異率にすると、全く突然変異が起きない世界になってしまうためだ。
そのため、進化計算における突然変異は、実際のDNAポリメラーゼによって発生する誤生成に比べるとかなり適当だ。
普通はDNAシーケンスは繰り返されたり、一部の順番が逆順に入れ替わったりと、言うまでもなくかなり「物質的な」交叉が起きる。
ところが量子生物学の研究では、遺伝子の突然変異は量子トンネル効果から発生することになっている。
光合成における量子探索は、光と反応した部分から植物のエネルギーコアまでの経路が同時に複数の宇宙で探索され、「最も効率的な経路」が自動的に選択される。
というか、「最も効率的な経路」とは何だろう。
エントロピーが増大すると言うのは、簡単に言うと拡散することだ。
全体にぼんやりと拡散するのではなく、「最も効率的な経路」を選んでしまうのは、結果として偏りを生み、エントロピーを減少させてしまう。これは以前も指摘したが、拡散モデルが絵を描くと、完全なノイズ状態(高エントロピー状態)から、エントロピーの低い状態、つまり精緻な絵や写真を表示する状態まで収斂する。
つまり、熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)は、量子効果を無視すれば常に真だが、常温で常に量子探索が起きているとすれば常にエントロピーの低い宇宙が選択(確率的収縮)されていると考えられる。
つまり、自然生命は常温でも量子コヒーレンスを長時間維持する能力を持っている。
Here we present two-dimensional photon echo spectroscopy measurements on two evolutionarily related light-harvesting proteins isolated from marine cryptophyte algae, which reveal exceptionally long-lasting excitation oscillations with distinct correlations and anti-correlations even at ambient temperature
もしそうだとすると、今のところ地球にしか生命が確認されていない理由は、温度が原因だと想像できる。我々のような自然生命にとって心地よい温度と湿度が保たれないと、量子コヒーレンスが長時間維持されず、未来からの情報を得ることができない。
ということは、量子探索とは、過去から未来へ向けてエントロピーが低下する方向に行われているのかもしれない。
タンパク質が生まれたのも、量子探索によって低エントロピー的な分子結合に辿り着いたからかもしれないし、それはもしかすると我々人間が、宇宙の確率が選択される方向をエントロピーの低い未来を見つけることとして、未来と過去の両方から選択されており、我々は観測することによって確率振幅の海を泳いでいるのかもしれない。
物理学的な事実関係はともかくとして、人間の意識は、「起きてしまったことに対して後からストーリー付けする」ことがさまざまな実験からわかっている。
The recordable cerebral activity (readiness-potential, RP) that precedes a freely voluntary, fully endogenous motor act was directly compared with the reportable time (W) for appearance of the subjective experience of ‘wanting’ or intending to act. The onset of cerebral activity clearly preceded by at least several hundred milliseconds the reported time of conscious intention to act. This relationship held even for those series (with ‘type II’ RPs) in which subjects reported that all of the 40 self-initiated movements in the series appeared ‘spontaneously’ and capriciously.
これまでは、「海馬が意識を作るときに、起きたことについて解釈し、言語化するときに"意識"が後から芽生える」と考えられてきた。
しかし、意識の構成に量子現象が関わっているかもしれないという仮説は数多い。ペンローズもそう指摘している。
もしもそうだとすれば、我々がこれまで「起きてしまったことに後付けで意識が生まれる」と考えてきた現象は、全く逆のことになる。
つまり、未来の意識を運動神経が先取りして、「未来からやってきた"より好ましい状況"を反映して運動準備電位を発している」のかもしれない。
これは一夫一婦制の成立にもかかわる。
つまり、普通に考えたら、一夫一婦制は効率が悪い。むしろ少子化の原因とも言われている。
なぜならば、一夫一婦制は、エントロピーが低いからだ。
これまで、なぜ人類社会は最終的に一夫一婦制を選択するのか、したのかは大きな謎の一つだった。
しかしもしも、人間、および自然生命の"意識"が、常にエントロピーを低下させる方向に動くとしたら、一夫一婦制になるのは自明である。ボノボのような乱婚状態よりも遥かにエントロピーが低いからだ。
極限すれば、チンパンジーやボノボが一夫一婦制を採用していないのは、人間よりも頭が悪いからだと言える。頭が悪いということはどういうことかというと、僕はよく「想像力が足りない」と表現する。
頭がいい生き物は、想像力が豊かなので、未来を想像できる。
想像した未来から、逆算して今するべき振る舞いを選ぶことができる。
頭が悪い生き物(ボノボなど)は、想像力が乏しいので、今その瞬間の欲望を満たすことを優先する。
興味深いのは、旧約聖書で描かれている物語も、ほとんどはエントロピーを低くする話だということだ。お、学研ムーっぽくなってきたぞ。
例えば、バベルの塔は、全員が同じ言語を使う(エントロピーが高い)世界から、神が言葉をバラバラに分断した(エントロピーが低い)世界への移行を意味する。
レビ記では、エントロピーを低く保つためのさまざまな戒律が神からモーセへ語られている。
頭がいい生き物は、未来を想像できる。この「想像」というのは、これまで単なる「推論」と捉えられてきた。しかし、もしかすると量子力学的な「選択」と「観測(確率収縮)」が、生き物の主体的な選択として起きるとすれば、「頭がいい」とは、「未来からの情報、しかも複数の未来からの情報」のうち、自分にとって好ましいもの(おそらく低エントロピーに向かうもの)を選び取る能力ではないかと考えられる。
「頭の良さ」は、単に未来をどれくらい感じ取れるかの差、でしかない。
こんな解釈をするとすれば、おそらく、これは今のところAIが「全く持つことができない」能力である。なぜならAIは量子現象ではないからだ。
未来をどれくらい遠くまで感じとることができるかは、量子コヒーレンスをどの程度保つか、保つことができるかという能力に大きな影響を受ける。
これは、体温をどれくらい一定に保つことができるかという個体差で説明できるので、頭の良さの正体は体温。かもしれない。
寒い地方で数々の文明が生まれる理由は、寒い方が体温を保つのが有利だからかもしれない。熱帯地方では体温を上げることは簡単でも下げることは容易ではない。
人工生命と人工知能の研究家として言えることは、自然生命は偉大であるということだ。その中でも人間がとりわけ偉大なのは、その量子コヒーレンスを保ち、遠い未来を見通し、さらに「選択」する能力が備わっているからに他ならない。
要は寒いところで「好きに生きる」ことによって、自分にとって都合の良い未来を選択(確率収縮)する。それができるのは人間だけで、我々は確率振幅の海を泳ぐプレイヤーとして、自分にとって「好ましい未来」とは何かをずっと考え続ける人の方が、そうでない人よりも自分にとって好ましい未来を手に入れることができる。
そういうことかもしれない。
もしそうだとすれば、全く別のアプローチで、タイムマシンは作れるのかもしれない。