ど素人のピュアオーディオ入門(13) KS-55Hyperは思考の加速装置だ
「ひらくPCバッグ」でお馴染みのいしたにまさきさんから突然メッセージが来た。
「清水さんのKS-55Hyperの記事がクリプトン社で話題になっていて、公式からリンクを貼らせて欲しいと言われてるんですが・・・」
まあそれもビックリしたんだけど、なんでいしたにさんに聞いてるのか謎。いしたにさんは僕のマネージャーとかではないのだが。
「もちろんいいですよ」と答えたのだが、ビックリしたのはその速度。
「もちろんいいですよ」と言ってから一時間後くらいにはリンクされていた。
しかも、あの麻倉怜士先生に並んでのご紹介である。僭越すぎる。
そんなこんなで、まあいいモノであるのは間違い無いので、もう少しKS-55Hyperについて語ってみたいと思う。
ちょうど今朝、某大学院大学の講義の資料を書かなければならなくて、これが結構、久しぶりに重い案件だった。
僕は講義の資料を作るのは速い方だと思うが、それでも新規のスライドが多いと苦戦する。その上、その新規のスライドに使うための動画素材を自分のNASから探し出すのにさらに苦労する。僕みたいな仕事をしているんだったら、過去のスライドの検索システムを可及的速やかに作るべきだが、紺屋の白袴というか、なかなか着手できない。ちなみにすでに過去のスライドを全てPDF化したものはできていて、あとは検索システムをCLIPとかで作ればすぐ出来るのだが、そのラスト・ワン・コードが億劫で書けない。
「書けばうまくいく」ことがわかっているプログラムなど、作るのは作業でしかない。そんなことをする時間があるんだったら、もっとクリエイティブなことに時間を使いたいのだ。
閑話休題、そんなわけで朝五時からスライド作成に取り掛かった。久しぶりの大仕事である。すると、傍にKS-55Hyperがあった。
僕の机はとにかくディスプレイがたくさんある。だからでかいブックシェルフは置けない。
そこでこのコンパクトニアフィールド・スピーカーであるKS-55Hyperが大活躍するのだ。
Amazon Music HDで渋谷慶一郎、ATAK024を選択。KS-55Hyperから重厚な音楽が流れ始める。澄んだ音は、思考を加速させる。闇夜の白鳥。
渋谷慶一郎の弾くピアノのリズミカルかつ繊細なタッチが、俺の思考を後押しする。
こればっかりはいつも不思議なのだが、なぜ音楽を聞くと心が踊るのだろう。
KS-55Hyperから流れる音は、まるで目の前にグランドピアノが置かれているかのような質感がある。
僕の実家はピアノ教室で、子供の頃からグランドピアノが家にあった。
でもグランドピアノから出る音は大きすぎて、下手くそな僕はそれを弾くのを躊躇うほどだった。下手な演奏というのは雑音でしかない。
だから僕たち兄妹はピアノ教室に生まれながら二人ともピアノが弾けない。
でも今ピアノの演奏を聴くと、むしろ懐かしい、温かい、包まれるような気持ちになる。
渋谷慶一郎は情熱的な人で、ピアノを弾く運指の一つ一つから、彼の情熱がKS-55Hyperを通して僕の中に流れ込んでくるような、そんな錯覚さえ覚える。
今こうして原稿を書いているこの瞬間も、渋谷慶一郎の曲を聞いていて、するとなぜか手がぽかぽかと暖かい。
そんなバカなと思うかもしれないが、本当にそうなのだ。
音の一つ一つから、彼の横顔が浮かんでくる。
気難しげで、それでいて繊細で、ひとつひとつの所作に全身全霊を傾けているような緊張感が伝わってくるが、それでいてまるでふかふかの毛布に包まれたかのように暖かい演奏なのだ。
あっという間に講義資料が書き上がった。久しぶりに妥協のない内容に仕上がったと思う。実際には4時間くらいかかってしまったが、KS-55Hyperで音楽を聴いていると、4時間など「あっという間」に感じてしまうのである。
最後に彼の演奏を聴いたのは、数年前、オーストリアのリンツでのことだった。
あれからもう随分時間も経ってしまったが、こうして彼の演奏をじっくり聴いてみる機会というのは、今までなかなかなかった。
KS-55Hyperが来てから、音楽というものが今までよりもっと身近になった。
近くで聞くからこそ、ほどほどに煩くならないボリュームで、いつでも音楽を楽しむことができる。
KS-55Hyperに本当に残念なことが一つだけあるとすれば、とにかく売ってないことだ。だから誰かにオススメしても、「買いたくても買えない」という状態になってしまうのはいかんともしがたい。
願わくば、これが一人でも多くのファンのもとに届くことを祈ります。
公式サイトを時々見て、在庫があれば迷わず買いです。